暴力団構成員は減少傾向で、高齢化も進んでいるという(写真はイメージ)
警察からも、身内からも目を付けられる“事情”
暴力団の生活は、一見ずいぶん大人しくなった。A氏が続ける。
「派手な車に乗っているだけで、警察から『あいつは金回りがいいな』と目を付けられる。横並びで繁華街を歩く、執拗なまでの煽り運転といった昔のような“いかにも暴力団”な行動をすると、それだけ勢いのある組だと思われて、警察の中でチェックされるようになる。そうすると組に余計な迷惑がかかるので、外面はおとなしくするのが一番です」
前述のように暴対法の厳格化により、組の経営がかなり苦しい実情もある。
「今いい車に乗っていたら、仲間内でも『あいつはどんなシノギ(暴力団が収入を得るために使う手段の総称)で、どれだけ儲かってんだ?』などと悪目立ちしかしない。いまどき、見栄を張って高級車なんて乗りません。メンツを気にしていたら、食っていけませんよ」
上納金の仕組みは下から上へのピラミッド構造だ。そのため、上がノーリスクで儲けるには、下から吸い上げる上納金を増やすしかない。しかし、人を増やせば上納金が増えるといった簡単な方法は、暴力団の減少によって難しくなっているのが現状だ。それによりどの組員も、自腹の出費にはシビアになっているという。
「ガソリン代も結構な出費になるから、できるだけ安く抑えたい。だから自分で乗る分には、国産の燃費がいい車がいちばん。
いい車に乗るのは、組のトップが集まる集会のときだけ。会社でいうと、役員会議にはスーツとネクタイで出席するようなもの。ただ、それ以外はもう誰がどんな車に乗るかなんて気にしていません。オヤジ(組長)だって『いい車に乗れ』とは一言も言わないですから」
組長クラスともなると、昔は単なる高級車ではなく、内装にもこだわった特注車を複数台所有していたという。しかし今は、アルファードのようなミニバンを運転手付きで利用することが多い。乗りやすく広い車内が人気で、“ムダに豪華”な車よりも、利便性追求の時代なのだ。
唯一変わらない価値観があるとしたら、色。伝統的な暴力団らしさ、強面のイメージを演出できるうえ、葬儀などの義理事に乗っていける実用的なカラーとして、今も黒色が好まれているようだ。