2024年春に卒業する大学生らを対象とした合同企業説明会。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ経済活動の正常化が進み、企業は人手不足感から採用に積極的な姿勢を強めている(時事通信フォト)
拙著『各業界で深刻なアルバイト不足「代わりはいくらでもいる」時代は終焉』や『1店舗残して閉店したコンビニオーナーの告白「働く人が本当に集まらない」』でも同じような意見を取り上げているが、本当に各業種、異口同音で「かつては就職の決まらなかった既卒が大勢、非正規で働いてくれた」を証言している。
「絶対ではないが、居酒屋は体育会系で誰とでも仲良くなれる、おしゃべりができるようなスタッフが望ましい。だからかつては大人しかったり、暗そうな子は落としたりもした。2000年前後は『こんな立派な理系の大学を出て、就職できなくて居酒屋のバイトか』という既卒も来たがもう来ない。いまそんな子が来たら即正社員、幹部候補だ」
しかし実際は来ない。アルバイトすら来ない。
「居酒屋は重労働でやることは多い。体力も使う。アルバイトのシニア採用を積極的にしてきたが、それもコロナ禍で解雇するしかなくなった。連絡してもすでに他の仕事についていたり、もう働く気はないと言われたりする。コロナ禍の自粛と酒を提供する店に対するバッシングで仕方がなかったとはいえ判断が甘かったように思う。これは多くの居酒屋チェーンも同様ではないか」
50代の元店長は「昔の話ですが」という断りならと話してくれた。
「自業自得なのは事実でしょう。とにかく人を粗末に扱い過ぎた。アルバイトはもちろん社員、店長だって『お前の代わりはいくらでもいる』と酷い扱いを受けた。1990年代後半くらいには暴力だってあったし、労基違反なんて当たり前だった。昼入って、深夜の閉店まで店に出て、座敷席で寝ての繰り返しで20連勤とか当たり前にあった。店に住んでいるような状態だった。本当ですよ」
もう令和なのに、昔のヤンキーみたいな幹部たちがいる
念を押すように元店長は「本当ですよ」を繰り返していたが、その他にも信じられない「違法」な労働環境があったと語る。今回はあくまで現在の「人手不足」が主題なので割愛するが、こうした積み重ねと風評もまた現代の労働者、とくに若者に敬遠される理由かもしれない。
「アルバイトだって酷いものでした。社会保険だって無視された。わずかな時給で大卒のアルバイトを大勢雇えて、何の保障もしないで使い捨て。居酒屋チェーンの『安い』はそういう子たちを犠牲にして成り立っていた」
元店長はすでに別の仕事についている。子どもは絶対、バイトであっても居酒屋チェーンで働かせないという。
「多くの居酒屋チェーンは『いまは違う』と言うかもしれませんが、そんなことない。さすがに暴力とか労働基準法違反を大っぴらにはしてないでしょうが。それにカスハラは依然として存在します」