西村陽平さんの作品『5冊の雑誌』に手を乗せる木梨と西村さん

西村陽平さんの作品『5冊の雑誌』に手を乗せる木梨と西村さん。1200℃以上で熱し続けてカチカチに固まった雑誌も触ることができる

 展覧会前日に作品を搬入して、奥様の安田成美さんと一緒に作品のレイアウトを決めていったという。

「どの部屋にどの作品を配置するか、部屋が決まったらその作品をどのようにレイアウトするか、そうしたことはすべてなるさん(安田さん)に見てもらっているんです。日本中巡っている展覧会も、大抵なるさんがプロデューサー。不思議といつも僕と同じ感覚を持っていて、『もう少し上かな』『もっと右のほうがいいかな』という細かいところまで、いつもなるさんと意見が一致するんです。迷ったときにも正解をくれるし、一緒に面白がってやってくれるので、いつも助かっています。今回もメインの『感謝』を飾った空間のレイアウトには時間がかかりましたね」

 そして、今回の展覧会では美術家の西村陽平さんとのご縁で、視覚障がい、聴覚障がい、自閉症、精神障がいなどハンディキャップを持つ方の作品を一緒に展示するという新しい試みも。

「西村先生に全盲の方も色を使った作品を作るということを聞いて、創作意欲が刺激されました。僕も目にタオルを巻いて制作した新作もメイン会場の右上に展示してあるんですよ。キャンパスの場所も水も絵の具のチューブも手探り。難しかったですね……。今回、こうして新しいことにチャレンジしてみて、自分が今まで線1本でも描きたいように描けるのはすごいことなんだと改めて感じました。ハンディキャップアーティストの方の作品も拝見して、見るだけではなく、できるだけ触れられるものを展示することにしたんです。壊れたら壊れたでいいんです。それが作品の味になるから」

 木梨さんがアート活動にハマったきっかけは、『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』(1991年~2001年・日本テレビ系)での企画だったという。岡本太郎さんの「芸術は爆発だ」に憧れ、木梨憲太郎名義でアート制作を始めて現在に至るまでその情熱は衰えない。来年2024年で創作活動30周年を迎える。最後に今後の展望を聞くと──。

「アートも歌手も、僕がやっていることって免許や資格はいらないからね(笑)。“何でも屋のおじさん”として30年前から楽しいことをエンドレスでやってきましたから。僕は今だって毎日楽しくてしょうがないんですよ。面白そうな話があったらすぐに『それやろう!』となりますし、今度はデザイナーやプロデューサーとしての新しいプロジェクトもあります。ワクワクすることはこれからも無限にあると思うので、動き続けていきたいと思います」

 * * *

 美術家・西村陽平さんからもコメントをいただいた。

「今回の展覧会は木梨憲武財団からお声かけいただき、ハンディキャップアーティストの作品を20点ほど展示させていただくことになりました。木梨さんの作品とバラバラに分けて展示するのではなく、一緒に展示されているので、新しい試みだと思います。最初から作品には触ってもいい企画だと聞いていたので、立体作品はすべて触ってOKなものになっています。全盲の小学校1年生の女の子が作った『そっと抱きしめてみる』という作品は、ハグをして耳を澄ませてみると、中から音が聞こえてきます。今回は触り心地と音をテーマにしていますが、電球を入れてほんのり温めても、アロマを入れて香りを出すこともできます。今回の展覧会にいらっしゃる方は、視覚だけではなく、体全体で感じて楽しんでいただければと思います」

◇GOKAN ~5感~ 木梨憲武
会期:現在開催中~6月25日(日)
会場:代官山ヒルサイドフォーラム&エキシビジョンルーム
開館時間:10:00~19:00(入場は閉館の30分前まで/最終日は~17:00まで)
入場料:大人(高校生以上)1200円/小人(中学生以下)600円
詳細はhttp://kinashi5kan.com/

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