女優・広末涼子(左/時事通信フォト)とフレンチレストラン「sio(シオ)」のオーナーシェフ・鳥羽周作氏(右/Twitterより)
ジャッジは難しいが、私は彼の判断のほうを支持したくなった。
鳥羽周作氏に話を戻そう。彼に対するさまざまなネットニュースのコメントの中に「この人は料理人ではなく商売人なのだ」というのがあって、なるほどと思った。繰り返しになるが、それが悪いわけではないし、自分の料理をより多くの人に愉しんでもらい、喜んだり幸せになったりしてほしいという気持ちはよく理解できる。
だが、1990年代から鳥羽氏のような人気店のシェフが数多くメディアに出ては消えていったのは、ある瞬間から「店に戻ろう」と思ったからではないのか。それはたとえば老舗菓子店が百貨店からの熱烈オファーを受けて“デパ地下”に進出するも、「味が守れないから」とやがて撤退してしまうことに似ているかもしれない。
また、タレントが経営する飲食店に当該タレントがなかなか現れないと、結果的に衰退していってしまうのにも似て、オーナーシェフはどんなに忙しくても各店にできる限り顔を出すことが求められているのだ。
PR大使や企業やイベントとのコラボ、そしてテレビ出演がどんどんなくなっている鳥羽氏。これまでも”本業“をおろそかにしたわけではないのだろうが、多くの仕事を失ったいま、「料理しかありません」と言うなら、”本業“に真摯に取り組む姿勢を顧客に見せることが信頼回復への第一歩ではないか。鳥羽氏のファンもそれを待っていることと思う。
◇山田美保子
『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などを手がける放送作家。コメンテーターとして『アップ!』(メ~テレ)、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)、『サンデージャポン』(TBS系)に出演中。CM各賞の審査員も務める。
