大谷翔平全身「解剖図」
二刀流が“相乗効果”に
2018年に海を渡り、メジャーで二刀流の挑戦が始まった。日本で鍛えた肉体を駆使して投打に奮闘するもメジャーのハードスケジュールがたたってか同年10月には右肘内側側副靱帯の再建術(通称トミー・ジョン手術)を受ける苦労も経験した。
投手として翌シーズンを丸々棒に振った大谷が、さらなる肉体改造に挑んだのが2020年オフ。この時、大谷はワシントン州シアトルにあるトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」を訪れた。
「最新機器を用いて科学的根拠に基づいたトレーニングができる専門施設です。そこで、大谷は重さの違うボールを投げる練習などで球速を向上させたそうです」(メジャー担当記者)
日米双方で学んだことを反映した体を武器に、2021~2022年シーズンではV字回復の結果を残した。
絶頂期に見える現在の大谷の肉体について、筑波大学准教授でコーチング学や野球方法論が専門の川村卓氏はこう語る。
「メジャーのパワーに対抗するには肩回りの筋肉強化が必須ですが、大谷選手はピッチャーもやるため柔軟性を残したまま肩回りの筋肉をつけた。これがバッティングにもプラスになり、肩回りの筋肉をしなやかに使って効率よくバットが出せています。プロ入り当初から長い年月をかけて、自ら考えながら段階的にトレーニングを積み上げてきたことで“二刀流ならでは”の体になっている。それが現在の活躍につながっていると思います」
昨季の開幕前、大谷は「(トレーニングで)上げる重量、体の強さは年々高まっている」と語った。日ハム1年目の大谷に肉体改造の指導をした経験もある川村氏は、今後についてこう見解を述べる。
「最初に会った時、『プロ野球選手のピークである20代後半に向けて徐々に体を仕上げてほしい』と助言しました。今は本人がコツコツやった成果が出ていると思います。この先は徐々に衰える肉体をどうリカバリーするかを含めた新たな取り組みが必要になる。ただし彼はすでに想像を超えているので、どう進化していくかわかりません(笑)」
来年30歳を迎える大谷だが、“進撃の肉体”は衰え知らずかもしれない。
※週刊ポスト2023年7月21・28日号