マメができた手をじっと見つめる大谷

マメができた手をじっと見つめる大谷(写真/共同通信社)

 大谷の過去類のない活躍は、まさに“トライ&エラー”の結果を冷静に分析して、次の挑戦につなげているからだ。

 いまでこそ大谷のめざましい活躍が注目されているが、二刀流としてメジャーに参戦した当初は壁にぶつかり続けていた。移籍してすぐの2018年6月にけがにより故障者リストに入った際は、周囲から「二刀流のせいだ」「野球を舐めているのか」と厳しい声が上がった。

 結果が伸び悩むたび「二刀流は不可能」と言われてきた大谷は、周囲の思い込みを否定するかのようにこう言い放ったことがある。

「両方やるから難しいのではなく、どちらも難しい、ということ。プロはピッチャーもバッターもレベルが高いですし、どちらかに絞っていたとしても、もっと勝てたのかとか、もっと打てたのかと言われれば、僕はそうは思いません」

 こうした大谷の言葉はただの強がりなどではなく、二刀流のデータがないからこそ自分自身がそのデータを集めているのであり、まだデータもない段階から不可能と決めつけるのは違うだろう、という分析に基づく発言だと言える。

 大谷は感情や思い込みに流されず、一歩引き自身の実力や周囲の評価を分析する力を、高校生の頃から鍛えていた。

「大谷選手は高校生の頃に目標達成シートを作成し、自分にいま足りていないもの、必要なものはなにかを冷静に分析する素地を養いました。目標達成シートの中には野球の技術に関することだけではなく、メンタルをどのようにコントロールするべきなのかという項目も含まれています。

 高校時代から経験にプラスして、こうした下準備にも余念がない大谷選手だからこそ、ニュートラル思考を身につけ、世界で活躍し続けることができるのでしょう」(樺沢さん・以下同)

対策法を3つ書き出す

 大谷のような超一流のスポーツ選手に限らず、私たち一般人にとってもニュートラル思考は重要だ。

「日常生活を送るなかでの精神の安定や、ストレス解消などにも効果があるのです」

 どうすればニュートラル思考を身につけられるのか。

「とても簡単です。まずは一日を振り返って、今日あったことをとにかくノートに書き出します。そのなかでうまくいった点と、うまくいかなかった点を、3つずつ選び出す。ポジティブな視点とネガティブな視点の両方から観察することで、自分の思考の癖を見つけることができる。これがはじめの一歩です」

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