『ティーンズロード』読者は派手でカラフルな、例えるならば『ドン・キホーテ』の店内のような誌面を好んだ

『ティーンズロード』読者は派手でカラフルな、例えるならば『ドン・キホーテ』の店内のような誌面を好んだ

「なんで俺たちのところだけ写真に色がついてねぇんだよ! ふざけてんのか! こら!」》

「これは完全に予想外だった。彼らには“こっちのほうがかっこいいと思ったから”と編集部の意図を説明したのですが、全然納得してくれない(苦笑)。結局、近々発行する予定だった暴走族写真集のほうでは必ずカラーページで掲載するから、と言うとすごく嬉しそうに“それならいい”と。この経験から、編集サイドの独りよがりな誌面作りは読者に受け入れられるどころか、かえってあだとなるのだと痛感しました。彼らの苦情からは編集者として学ぶことも多かった」

 比嘉さんは現在も編集プロダクションの社長として多数の雑誌に関わっているが、この「アドバイス」を忠実に守り、雑誌を作り続けているという。

 また、当時苦情が多かったのは、それだけ読者と編集部の距離が近く、『ティーンズロード』を「自分たちに寄り添ってくれる雑誌」として愛し、発売を心待ちにしていたことの裏返しといえるだろう。

「あの頃『ティーンズロード』編集部にはほぼ毎日のように全国からレディースや暴走族の少年少女が遊びに来ていました。地方から来る場合は『東京ディズニーランド』に遊びに来たついでに寄るケースがほとんど。そういう子たちの多くは編集部に来ると、まるで借りてきた猫のように大人しくなって、地元で取材した時と全然違う顔を見せるのがおかしかった。とくに編集部に印刷関連の業者の方がいる時は編集者よりさらに”まともな大人”を感じさせる空気に気圧されたのか、慣れない敬語で挨拶をする様も印象的でした」

 せっかく遊びに来たのにすぐに帰りたがるところも、レディースたちの共通点だったという。

「ものの5分でそわそわし出す。やっぱり地元が一番なんだな、と思いました」

【プロフィール】
比嘉健二(ひが・けんじ)/1956年、東京都足立区出身。1982年にミリオン出版に入社。『SMスピリッツ』などの編集を経て、『ティーンズロード』『GON!』などを立ち上げる。現在は編集プロダクション『V1パブリッシング』代表。本作で第29回小学館ノンフィクション大賞受賞。

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