鴻江寿治氏(左)と峰幸代選手(中央)と渥美万奈選手(右)
詳しくはあとから説明しますが、それぞれのタイプに適した体の動かし方があります。逆に、タイプに合わない動かし方をしていると、ベストパフォーマンスを発揮できないどころか、故障やケガのリスクが高まってしまいます。
私は、女子ソフトボールのレジェンド・上野由岐子投手の個人トレーナーを務めています。北京と東京の2度の五輪で2つの金メダルを獲得し、五輪の選手村では海外チームの選手が握手を求めるほどに、リスペクトを集める選手です。
鉄腕ぶりばかりが目立ち、北京五輪では2日間で3試合をひとりで投げ抜いた「上野の413球」が語り継がれる伝説となっていますが、あの熱投の裏側では、上野投手に異変が起きていました。
原因のひとつは、日本の柔らかいマウンドに比べて、北京の球場のマウンドが硬かったことです。本来、右腰が前に出ている「うで体」タイプのはずの上野投手でしたが、地面が硬いために踏み出す左足側に壁ができ、右腰が前に出てこなかった。そのため、ピッチングが非常に不安定になっていたのです。ピッチャーは足を着いてから足首、ひざ、腰、肩、首のバランスをとりますが、それが崩れていました。そこで「うで体」「あし体」の特性を生かした投げ方をアドバイスし、なんとか修正しました。
このように、日々研鑽を積むトップアスリートでも、ちょっとしたことでベストパフォーマンスとほど遠いプレーになってしまうことは起こり得るのです。
ただ、アスリートとは言っても、1人の人間であることには変わりません。体の仕組みは、一般の人とまったく同じです。であるならば、アスリートへの対応で見えてきた私の理論は、一般の人がよりよく元気に日々を過ごすことにも応用できるのではないかと考えました。
「理論」などと言うと少し難しく感じるかもしれませんが、必要なのは普段の生活におけるちょっとした心がけです。その心がけによって、いつまでも元気な体を手に入れられ、「人生100年時代」を充実したものにすることができるのです。
