2021年3月、新型コロナウイルスの検査キットやパルスオキシメーターを売る店。当時は求める人が多く品薄だった(時事通信フォト)
同じく返していない大阪市の70代男性。
「液晶がおかしくなっちゃったから捨てちゃったよ。電話したら捨てていいって言われたし」
これ、意外と知られていないがパルスオキシメーターは必ず返却しなければならないものではなく、破損したり故障したりした場合は返さなくていいことになっている。彼の住む大阪市の『パルスオキシメーターの返却について』から引く。
〈パルスオキシメーターが破損、故障している場合、返却は不要です。家庭から排出される一般廃棄物となりますので、普通ごみとして排出ください。乾電池は、環境局環境事業センター窓口で受付回収等を行っています〉
ごみの種別や乾電池の回収は自治体によるが、いずれにせよ壊れたり、故障したりなら返さなくていいのは各自治体に共通している(一部例外除く)。
首都圏に住む70代男性は「これから使うかもしれない」として返却してないと話す。
「高齢者だから怖いよ。だから返してない。返せ、とも言われてないしね」
こうした未返却に対する自治体の対応もそれぞれだ。厳しく返却のお願いをする自治体もあれば、彼の言う通り直接的な返却は求めず、広報媒体などに「お願い」を掲載するのみにとどめる自治体もある。
壊れた、ということにしました
区役所の職員は「あくまで全国の事例としての話なら」と話してくれた。
「多くの自治体もあきらめているのでは。正直なところ、返却することが決まっているから返却してもらおう、という程度なので、じゃあ返却されたらどうするか、という話もある。返却物の消毒だってタダじゃない。コロナ禍の最盛期などはパルスオキシメーターが足りなくて『次の利用者のためにも』という名目があったが、今ではどこも相当数のパルスオキシメーターを確保している。追加で買い続けてダブついている自治体もある。コロナ禍が見通せなかった時代には仕方がなかった部分はあるが、返却を促すにも人手や手間がかかる。罰則も罰金もありませんから。それでも『返さなくていい』とは言えない立場もある」
彼の話す通り、すでに東京都では一部を残し、使用済みのパルスオキシメーターを医療機関や高齢者施設に無償譲渡している。これは他県でも同様だ。返却に関して一部報道によれば、和歌山県や熊本県は返却数を詳しくは把握していないとのことで「あきらめている」ととられても仕方のない状況だ。