ライフ

「ゾマホンさんが日本留学を勧めてくれた」ベナン出身・エマヌエルさんが感じた日本語の「音の親しみやすさ」【連載「日本語に分け入ったとき」】

ベナン共和国出身のアイエドゥン・エマヌエルさん

ベナン共和国出身のアイエドゥン・エマヌエルさん

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。今回は、北村氏が働いていた日本語学校の卒業生で、現在は関西大学システム理工学部で助教を務める、ベナン出身のアイエドゥン・エマヌエルさんにうかがった。【全3回の第1回】

 * * *

 アジア、アフリカ、中東。わたしがかつて非常勤で教えていた神奈川県横浜市の日本語学校には、30以上の国・地域から留学生が来ていた。

 多国籍のクラスは共通語が日本語しかないので、最初はなかなか交流が図れない。初級の教室には、なんとなくお互いを観察するような空気が漂っている。しかし時間が経つにつれ、獲得した日本語で軽口をたたき合ったりアドレスを交換したりという光景が見られるようになる。教師に対しても質問が多くなるだけでなく、授業が終わると『荷物を持ちましょうか?』と話しかけてきてくれる学生も増える(わたしが日本語学校で働いてびっくりしたことのひとつは、留学生たちが教室の移動時に率先して荷物を持ってくれることだ)。

 教え方には毎回悩むし、大変なこともたくさんあるけれど、地球上の様々な場所から日本を選んで来てくれた人達と時間を共にできる機会はそうはない。授業を担当したクラスの留学生たちは今どうしているんだろうと、顔を思い浮かべることもたびたびだ。

 今回お話を聞かせてくれた、西アフリカ、ベナン共和国出身のアイエドゥン・エマヌエルさん(エマさん)は、わたしが働いていた日本語学校の2011年の卒業生だ。わたしがエマさんのクラスを担当することは残念ながらなかったのだが、学校の旧知の先生から『大阪にすてきな卒業生がいるんですよ』とエマさんを紹介され、ぜひお話を伺いたいと思った。

 関西大学のシステム理工学部で助教を務めるエマさんは、人の意欲や共感を引き出すような感情知能を備えたコンピュータシステムに関する研究をされている。今日はよろしくお願いします、と挨拶をしてから、エマさんはすぐに『すみません、私、そこまで日本語がうまくないんですけれど……』とおっしゃった。7000近くの作品が寄せられた日本語学習者による作文コンクールで1等を獲得したり、弁論大会ですばらしいスピーチを披露されたり、そしてもちろん研究に関する論文もたくさん発表されているのに──?

 エマさんはいやあ……と、少しはにかんだ表情を見せた。

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン