高校時代は恵まれた体格と愚直なプレーが評価され、愛知県選抜の候補選手に選ばれたが、家庭には選抜で活動するための遠征費4万円を払う余裕がない。姫野は親にも監督にも理由を話さず、県選抜のセレクションに本来と違うポジションで参加。本人の“狙い通り”に選考から漏れた──。
生活の苦しさは、まだ高校生の姫野の首を絞めていた。
先の自著では、〈死んだほうが、きっと楽だよな〉と思ったことを吐露しており、台所にあった包丁を手に取り、喉に刃を突き立てたエピソードが綴られる。あと数ミリという所で、脳裏に浮かんだのは友人と一緒に食べたカップ麺や半分にした肉まんだったという。
「姫野にとって“希望の光”となったのがラグビーでした。この生活から脱却するためにラグビー選手として成功し、大きな会社に入って普通の家庭生活を送る。それが彼の目標だったそうです」(ラグビー関係者)
(後編に続く)
※週刊ポスト2023年10月6・13日号