かつては解説でも話題を呼んだ白鵬
様々なルートを駆使して弟子集めに邁進する白鵬
たたき上げのイメージが強い元横綱・稀勢の里の二所ノ関部屋にも、部屋付きの中村親方(元関脇・嘉風)が日体大OBということもあって、同大からの入門が続いた。先場所、新十両で快進撃を見せた大の里も日体大出身である。ただ、「今回のルール変更は、元横綱・白鵬の宮城野部屋への牽制ではないか」(協会関係者)とも見られている。
「実業団横綱が対象から外れたというのは興味深い。宮城野部屋の伯桜鵬は鳥取城北高卒業後に、父親の会社に所属して実業団横綱になってから幕下15枚目格デビューしている。実業団大会はプロを目指すというより、ベテランのアマチュアが参加する大会。すでに給料をもらい、年齢も高い。そのため実業団横綱からプロ入りしたのは65年の歴史の中で4人だけ。プロを目指す学生たちが競う他の大会に比べてハードルが低く、過去には逸ノ城(鳥取城北高→鳥取県体育協会職員)、大奄美(日大→日大職員)など抜け道のようになっていたこともある。そうしたかたちでの幕下付け出しデビューを果たせるルートを封じたようにも見える。結果として、伯桜鵬のような超スピード出世は実現不可能になった。
実際、白鵬は様々なルートを駆使して、有望な弟子集めに邁進している。大学では日大にパイプがあるし、部屋付き親方である間垣親方(元前頭・石浦)の父が総監督を務める鳥取城北高相撲部とのつながりも最大限に利用している。少年相撲大会の『白鵬杯』で青田買いをして、中学から鳥取に相撲留学させた後、鳥取城北高、日大などを経て宮城野部屋に入門させるといったルートを確立しつつあります。
また、宮城野部屋ではモンゴル生まれながら1部屋1人と規制される外国出身力士にカウントされない北青鵬のような例も出てきている。白鵬が協力して中学から鳥取に相撲留学させるなどして、日本の在留期間が10年を超えているため外国出身力士枠の対象とならなかったのです。こうしてモンゴル出身者の有望株も部屋に集めようとしているとみられています。協会執行部としては、有望な学生力士などを精力的に集める白鵬の弟子が一大勢力を築き、協会内で発言力を増すことを警戒しているのでしょう。学生力士のスピード出世に歯止めを掛けたのは、その危機意識が見え隠れします」
現役時代から奔放な言動があり、協会執行部から厳しい目線を向けられてきた白鵬。親方となってからの“スカウト力”もまた、新たな火種となるのだろうか。
※週刊ポスト2023年10月20日号
審判部に異動となった元稀勢の里