芸能

72歳になった中村雅俊「人生、まだ燃料切れした感じがしない」 70年代青春ドラマの舞台裏を振り返る

72歳になった中村雅俊が熱く語る

72歳になった中村雅俊が熱く語る

 安保闘争終結後、無力感に覆われた1970年代に生まれた青春ドラマは、「明日のために今日を生きるのではない。今日を生きてこそ明日がくる」(『俺たちの旅』第7話)と力強いメッセージを放って人気を呼んだ。傷つけ合い、失敗を重ねても、思いやりと優しさを忘れない青春群像劇の中で、ひと際輝きを放ったのが中村雅俊だった。現在も歌に役者に活躍を続ける中村が、当時の青春ドラマの舞台裏を語った。

 * * *
「『お前、主役になったよ』と言われた時は、まだ大学生でした。約40倍の選考をくぐり抜けて文学座の研究生になったばかりで、当時は他人事のようでね。そんなズブの素人がテレビの連続ドラマの主役だなんて、今だったら考えられませんよ」

 中村雅俊が主演作『われら青春!』でデビューしたのは1974年。当時の青春ドラマですでに定番となっていた、ラグビーを主軸として生徒の成長を描く物語だった。従来の作品と大きく異なったのは、中村演じる教師の描かれ方。それまでの教師は、生徒を教え諭して引っ張っていくヒーローだったが、生徒とともに泣き、笑い、愛される教師像が描かれた。その後の青春ドラマの方向性を決定づけた作品といえる。

「オーディションは、『太陽にほえろ!』で萩原健一さんが演じるマカロニ刑事のセリフを読んだり、面接したり、といった内容でしたが、まさか受かるわけないと思っていました。芝居に興味があって文学座の研究所に入所したばかりで、カメラの前での演技の経験なんて、もちろんない。『われら青春!』のプロデューサーである岡田晋吉さんは『太陽にほえろ!』も担当していたので、ドラマが始まる前に、『太陽にほえろ!』に少しだけ出演させてもらいました」

 当時、青春ドラマの教師役が歌を出すことがひとつの慣例となっていた。中村もドラマの挿入歌としてデビューシングル『ふれあい』をリリースしたが、たちまち「オリコン10週連続1位」「売上120万枚以上」という驚異的な結果を残した。環境が急激に変化して、意識が追いついていかなかったという。

「『われら青春!』に出演している生徒役は、すでにテレビで活躍している人たちばかり。ヒザ下までのロングコートを着ていたり、ロンドンブーツを履いたり、おしゃれでかっこいい子ばかりでした。どこにでもいそうな普通の兄ちゃんみたいな俺が『よろしくお願いします』と挨拶したら、みんな、あからさまに『嘘でしょ?』という顔をしていました(笑)」

 続く『俺たちの勲章』(1975年)では、文学座の先輩である松田優作と共演。スタッフは岡田晋吉氏や脚本の鎌田敏夫氏など、ほぼ同じ顔ぶれの現場だったという。

「デビューしてから10年ほどは同じスタッフと仕事をしました。身内ともいえるようなチームで仕事ができたから、マイペースに取り組めたのかもしれません。とはいえ、周囲はすごい役者ばかりでしたから、『頑張らなきゃ』と気負ってNGを連発しました。スタッフに『おい、中村があと何回NGを出すか、賭けようぜ』と聞こえよがしに言われるなど、主役らしからぬ扱いも度々受けましたが(笑)、温室育ちみたいなもので、温かく育てていただいた実感があります」

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト