♦大勢の私服警官が包囲
アヤに取材した翌日(10月14日)である。15時45分から現地で取材を始めると、「アメリカン通り」は前日同様、見物客がひっきりなしに行き交っているが、前日と打って変わって立ちんぼの姿を一人も見かけない。扇町通から「アメリカン通り」を抜けた南側のパーキングの対面に、それらしき若い女性が1人いるだけだった。この界隈は風俗街。人と待ち合わせするには、あまりにも不自然な場所である。
5分もすると、周りの様子を伺うように年配の男性が件の女性に声をかけて、何度か言葉を交わす。数分後、男性だけが離れていき、しばらくするとまた別の男性がこの女性に声を掛けるという光景を、目撃しただけで3回。女性のほうも拒否反応を見せる訳でもなく、会話には応じている。
記者が到着後、1時間ほど経過すると女性3人が立ち始めたが、普段と比較しても実に閑散とし、明らかに何かが異なる違和感がある。「アメリカン通り」に近づこうとせず、離れた場所から俯瞰して見ている女性たちがいたからだ。
辺りを散策しつつ、最初に女性を見た南側のパーキングエリアに戻ると、パトカーが一台、目の前で停車する。見回りの警官だろう。そう思って見ていると様子が何やらおかしい。行動が慌ただしく、車両から2人の警官が降りると御堂筋へと向かっていくのだ。
警官の向かった先は5、6人の男性に囲まれた一人の女性の元だった。野次馬も集まり、隣にいた50代の男性が「女の子、逮捕されたみたいやで」という。
結果からいうと、取り囲んでいた男性は私服警官だった。
パトカーに連行された女性は、不自然な場所で立っていた、あの若い女性である。だが、現場は逮捕直後から混沌とし、警官らをスマホで動画撮影する人物まで現れて、「撮るな」「関係ないやろ」と警察と押し問答。さらに警官に向かって怒号を吐く連中までいた。事情を知る関係者はこう語る。
「捕まった女性は未成年で元々マークをされていたようです。ホテルに入る直前に声を掛けられて、それで逮捕となった」
逮捕現場を目撃した男性もこう言う。
「男性が近くのパチンコ店に逃げたみたいで、警官が来て店内が騒然となってました」
「違法な客引きをやめよう」とのプラカードを手に、10月12日には曽根崎署と地元町会などが合同で「アメリカン通り」を夜回りした。大阪・関西万博などのイベントを控え、過去の慣習から当局はこうした違法行為を必ず問題視する。
立ちんぼに対する包囲網は確実に迫っている。
(後編、了)
♦取材・写真/加藤慶