渡辺真衣被告が販売していた「マニュアル」の一部
麻薬的なスリル
渡辺被告が巨額の金を落とした「ホストクラブ」といえば、かつて有閑マダムや社会的に成功した金持ちの女性が、年下の男性と遊ぶために訪れる──そんなイメージだった。だが、現在のメインターゲットは20代女性だ。彼女たちのなかには月に100万円以上も使う“太客”も少なくない。
背景にあるのが、10年代後半から拡大した「パパ活」である。店に一部を取られる風俗嬢に比べて、ダイレクトに金銭を受け取れるパパ活は、女性を買う男性がSNSを使いこなすようになってから爆発的に増加した。「若ければ若いほどお金を稼げる」という構造をホスト側も容赦なく利用し、彼女たちに積極的にパパ活をするよう促している。
そこで渡辺被告が生み出したのが、「頂き女子」というパパ活を“正当化”する新しい言葉だったのだろう。
渡辺被告は「魔法」という名の嘘を駆使して大金を稼ぐ様子を、SNSで「計5000万以上頂いてるおぢとのLINE」などと喜々として発信していた。その影響は大きく、昨今、歌舞伎町には彼女のやり方を真似る“りりちゃん信者”が増加している。
15歳から歌舞伎町に通っていた筆者が理解できてしまうのは、嘘をついてお金を「頂く」過程には、実に麻薬的なスリルがあることだ。そして稼いだ大金をホストクラブに湯水のように注ぎ込み、派手なシャンパンコールを浴びる。まさに“刺激中毒”である。
こうした事件が起きるたびにホストクラブとホスト側の悪質さがクローズアップされる。社会がこの悪魔的な刺激から若い女性をどう守るか、改めて考えないといけない。
取材・文/佐々木チワワ(ライター)
※週刊ポスト2023年11月17・24日号