スポーツ

過去2万回超のレースに騎乗した蛯名正義氏の本音「上手く乗れた」ことはほとんどない

JRA重賞はGI26勝を含む129勝の蛯名正義氏

JRA重賞はGI26勝を含む129勝の蛯名正義氏

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、“レース後のジョッキー”についてお届けする。

 * * *
 今年も残すところあとわずか、暮れの大一番・有馬記念に向かって毎週のように重賞レースがあり、馬券検討にもさらに熱が入ることと思います。そこではジョッキーが誰かということを予想の重要なファクターと考えている方は多いことでしょう。

 調教師としてはまだまだ若輩者ですが、ジョッキーとして内外で2万1483回のレースを経験したことは僕の財産です。騎乗馬が決まってからさまざまな準備を重ねてきてレースシミュレーションをするなど、一頭一頭全身全霊をかけて乗って来た僕に言わせてもらえるなら、「上手く乗れた」なんていうのはきわめてレアケース。相手が生き物だけに、ほとんどが思い通りにいかないものなのだということです。

 ジョッキーを誰にするかというのを決めるのは、調教師の「特権」ですが、大きな牧場の生産馬や、大馬主さんの有力馬は、エージェントを介してジョッキーが決まっていることがあります。リーディング上位のジョッキーを確保してくれているのは、ある意味では助かります。昔はしがらみとかあったのだろうけど、いまはビジネスライクになっていますね。特に世界各地の有力ジョッキーが短期免許で来日するこの時期は、どんな乗り方をするのかを見るのが楽しみでもあります。

 それでもこの馬にはこのジョッキーを乗せたい、と思うことはある。クセの強い馬などは調教で乗ってもらってその個性を掴んで、レースになった時に馬が前向きに走るモードになるようしつけていかなくてはいけない場合がありますからね。

 レースにしてもただ勝つため、負けないようにというだけではなく、学校へ行って何かを覚えて帰って来るということを教えてあげるようなこともしてほしい。新馬ならば、こういうふうにパドックを回って、地下馬道を通ってコースへ行って、レースをして帰ってくるんだよということで、馬と信頼関係を築いてもらいたいですね。

 特に若いジョッキーは調教からその馬のクセを把握することで、分かってくることがあるはずです。こういうところに気を使ってあげなくちゃいけないんだなと分かっていれば対処することもできる。経験少ない騎手は、いきなり競馬に乗っただけでは分からないと思うのです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン