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日本テレビも人気ドラマを配信(時事通信フォト)

年末年始は“一気見”のチャンス

“年末年始”という時期とドラマ視聴の相性もポイントのひとつ。

 年末年始は長年、朝から午後と深夜帯で「ドラマの全話再放送」をすることが局を問わず定番化していました。これは「社会人も学生も長期休暇の人が多く、コンテンツを見る時間がたっぷりある」という背景を生かした編成ですが、その流れが放送だけでなく配信にも及んでいるということ。さらに「無料配信を呼び水に、有料会員数を増やすチャンスがある」ということでもあるのです。

 そしてもう1つ重要な狙いは、年明け1月期にはじまる冬ドラマの番宣。

「年末年始をはさむ冬ドラマは一年の中でもスタート時の番宣が難しい」と言われているだけに、年末の段階から早めにPRをはじめておきたいところです。その点、TVerでの無料配信キャンペーンは、「いつでもどこでも見てもらいやすい」という視聴者にメリットがある形。さらに「一年ウチの番組を見てくれてありがとう」というファンサービスという意味合いも加えられ、引いては局自体のイメージアップも期待できます。

 このメリットを最大限に生かしているのが日本テレビで、冬ドラマ『XXX占拠』主演の櫻井翔さんが出演した『先に生まれただけの僕』『よい子の味方 新米保育士物語』『ザ・クイズショウ』、冬ドラマ『厨房のありす』主演の門脇麦さんが出演した『トドメの接吻』『お迎えデス。』、冬ドラマ『となりのナースエイド』主演の川栄李奈さんが出演した『3年A組』などを配信しています。

 フジテレビも冬ドラマ『大奥』の番宣として、『大奥』(2003年版)、『大奥~第一章~』(2004年)、『大奥~華の乱~』(2005年)のシリーズを一挙配信。再放送や再配信には、制作元や契約形態などによる違いこそあるものの、基本的に許諾と報酬が必要になりますが、その点「冬ドラマの番宣」という確固たる目的があればハードルは下がります。

求められる世界配信キャンペーン

 ただ、シビアなところを言えば、「民放各局が国内向け需要だけで争っているようでは、大きな成果は得づらく、未来に不安が残る」というのが実際のところ。今後、配信収入を増やしていくためには、ネット広告単価を上げ、有料会員数を増やすのはもちろん、海外配信でも稼いでいくことが求められています。

 その際、NetflixやAmazon Prime Videoなどのグローバルプラットフォームと提携するという形では、収益性の不安定さがある上に、日本ドラマのブランド力を高めていくことは難しいのがリアルなところ。現在、民放各局系列の有料動画配信サービスはU-NEXT、Hulu、FOD、TELASAに分かれていて、それぞれが世界配信の道を模索しています。

 しかし、このままでは数年に一度は世界でヒットするドラマが出るかもしれませんが、欧米や韓国などと比べると「日本ドラマ」としてのブランド力が弱い分、散発的な成功に終わってしまう可能性が高いでしょう。

 本気で民放各局が生き残っていくためには、世界配信の成功は欠かせないだけに、TVerのように集約したポータルを作って“日本ドラマチーム”で世界に打って出るくらいのスタンスが求められています。はたして今回のような配信キャンペーンが国内向けではなく世界各国に向けて行える日が来るのか。もしかしたら今年の12月は、そんな未来に向けた第一歩なのかもしれません。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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