しかし世界に目を向けると、ダート競馬は決して“脇役”ではありません。アメリカ最大のスポーツイベントと言われるケンタッキーダービーや、ドバイワールドカップ、1着賞金13億円というサウジカップもダートで行なわれています。同じコンディションを保ちやすく、芝の傷み具合などで枠順による有利不利が少ない、より公平な競馬が好まれているようです。日本からの参戦馬も健闘していることから、国内でのダート路線の整備が望まれていました。これまでは芝でデビューさせたものの、スピードやキレが足りない馬がダート戦に回るという傾向でしたが、最初からダート路線を歩む馬も増えることでしょう。
ここ2年のセリでもダート血統の馬も落札価格が高騰しています。僕の厩舎でもこの流れを見込んで、シニスターミニスターやヘニーヒューズ産駒などが多くなってきました。
これを機に日本ではあらゆるカテゴリーで世界に通用する馬づくりが進んでいくのではないでしょうか。そのうちに芝馬、ダート馬などという区別も意味がなくなり、大谷翔平選手のように「二刀流」として世界に名をとどろかせる馬も出てくるかもしれません。僕もそういう輝きを放つ馬を管理したいと思っています。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2024年1月12・19日号