税関が輸入を差し止めた知的財産侵害物品、いわゆるブランド偽造品の数々。ニセモノに「NO」と言える日本であり続けてほしいものだ(イメージ、時事通信フォト)

税関が輸入を差し止めた知的財産侵害物品、いわゆるブランド偽造品の数々。ニセモノに「NO」と言える日本であり続けてほしいものだ(イメージ、時事通信フォト)

 坂本さんの彼が始めた“事業”なるものは、日本の人気商品を海外に「転売」する仕事だった。確かに、海外のサイトを覗くと、日本国内のドラッグストアで販売されている衣料品以外の商品が数多く転売されている。それぞれ市価よりもかなり高額で販売されていて、その差額が、いわゆる「転売ヤー」のもとに入る仕組みだと思われる。正常な市場取引を妨害する転売は、今や常識のある消費者には忌み嫌われているが、坂本さんの彼は、転売と説明しつつも、ただ偽グッズを作成し、事情に疎い海外のユーザーに販売しているように見えた。

「思い切って、それは犯罪だと伝えたところ彼は激高。犯罪なら警察にチクれ、今までごちそうしたりプレゼントしたものも転売益なのだから私も共犯、というようなことを言われ、私もさすがに目が覚めました」(坂本さん)

 交際関係を解消し、彼の行動を警察に通報したという坂本さん。ところが警察は「本当に偽物と言い切れるのか」と、彼に確認の電話をすることにすら難色を示した。その後、彼が勝手に作成し販売していた偽グッズの権利者にもメールを送ったが、今のところ反応はないのだという。

「彼はその後も偽グッズ販売から足を洗えていないようです。それどころか、ビジネス仲間を募集するとSNSに書き込み、新たな仲間まで募集し、札束や高級車の写真をアップする始末。元彼ではあるし情も残っているので、SNS投稿が、典型的なあぶく銭をひけらかす感じになっていて切ないです。危ういことをしていると気づいているのかもしれませんが、儲かっているからか、あまりに簡単に作れてしまうからかわかりませんが、止められなくなっているようです。逮捕され、痛い目に遭わないとわからないのでしょう」(坂本さん)

 たった今、筆者が手元のスマホでスマホサイトやオークションサイトにアクセスすると、他者の権利を侵害していると思しき怪しげなグッズを販売しているユーザーがあちこちに存在することがわかる。

 実は筆者も、世話になっている取引先企業の高齢夫婦から「ファンだったでしょう」と、アメリカプロバスケットボール「NBA」関連グッズを頂いたが、夫婦の息子がフリマサイトで購入したという真っ赤な偽物だった、という経験がある。その息子に悪意があったかどうかは判然としないが、少なくとも夫婦には悪意はなかったはずだけに、いたたまれない気持ちになった。

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