押収された「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」のTシャツと、偽造トレーディングカード。2022年(時事通信フォト)

押収された「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」のTシャツと、偽造トレーディングカード。2022年(時事通信フォト)

 いったい何が”暗黙の了解”なのかは不明だが、この友人は、大谷選手の偽グッズを作成し、販売することについて「誰でもやっている」「(選手や球団が)わかっていても見過ごしている」と主張したかったらしい。当然、大谷選手や球団の権利を侵害する立派な違法行為であり、バレれば摘発、逮捕されてもおかしくない。それでも友人は身勝手な主張を繰り返したという。

「キーホルダーは一個1000円弱で販売しているそうです。その原価は200円ほどらしいのですが、大谷ブームで飛ぶように売れているんだと自慢していました。友人のフリマサイトのアカウントを見ると、大谷選手の他にも米大リーグのダルビッシュ有選手や前田健太選手、鈴木誠也選手や千賀滉大選手のキーホルダーを、やはり無断で作り販売していました。明らかな犯罪に手を染めているのにひょうひょうとしていて、友人ながらゾッとしました」(古橋さん)

 筆者が件のアカウントを見ると、そこには100個近いキーホルダーが販売されており、説明欄には「海外のノベルティ」であり「頂き物」、さらに「細かいことを気にする方は購入を控えるよう」などと記してあった。これはまさに、フリマサイトやネットオークションで偽ブランド品や非正規品を売りさばく犯罪者のやり方に他ならない。「海外購入品」であり「お土産でいただいた物」なのだから、品物が正規品かどうかは不明であることを暗示し、あくまで「偽物」とは言わない。消費者の錯誤を狙ったり、非正規品でもかまわないという遵法意識の低い消費者の購入を促すのだ。

 筆者は、商品販売ページに「これは違法ではないのか」と質問を送ったが、その後アカウント自体が見られなくなった。ついにバレたと出品を取りやめたのかと思い、古橋さんに確認したが、今なおページは存在しているようで、どうやら筆者のアカウントがブロックされただけのようだった。

「お金がどんどん入ってくるから、犯罪であっても止められなくなっていると思うんです。その割に、誰でもやっているとか、これくらいは大丈夫とか言い訳をして、自分を納得させているかのようです」(古橋さん)

それは犯罪と伝えたら激高された

 偽造品を作って販売することは、人殺しや傷害のように人を傷つける犯罪ではないかもしれない。だからといって他者の権利を侵害することは、努力してゼロからモノやコトを生み出した人の大切なものを盗んでいることになる。人のものを勝手に奪っているにもかかわらず、これくらいなら大丈夫とか、他にももっと悪質な人がいるなどと身勝手な自己弁護に終始し、違法に金を得ようとする行為が許されるわけがない。和歌山県在住の会社員・坂本春菜さん(仮名・20代)も憔悴しきった面持ちで訴える。

「ある日、彼の部屋に入ると、私でも知っている人気ゲームキャラクターのTシャツやトレーナーが山積みになっていたんです。他にも、パソコンにつながれた大きなプリンターや、布地に絵柄などを転写する機械もあった。どうしたのかと聞くと、ネットで知り合った知人と”事業”を始めたのだと言うんです。正直、その時点で嫌な予感はしていました」(坂本さん)

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