国内

【桐島聡とみられる男の最期】60代女性記者が思い浮かべたキリスト教信者の言葉「最後の最後に神にすがって虫がよすぎる」

潜伏生活を続けた桐島聡容疑者

潜伏生活を続けた桐島聡容疑者(時事通信フォト)

 連続企業爆破事件で指名手配されていた桐島聡容疑者とみられる男が自ら名乗り出た末に最期を迎えた。その真意は何だったのか。『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が綴る。

 * * *
「東京になんか行って大丈夫なのげ?」

 昭和50(1975)年の春、高卒で上京する私に郷里の人は皆、そう言った。その前年、過激派集団「東アジア反日武装戦線」による三菱重工ビル爆破事件が起こり、8人の死者が出た様子が繰り返しテレビニュースで流れていたから、東京で就職したら大事件に巻き込まれないとも限らないと言うの。

 上京して靴屋の住み込み店員になってからわかったんだけど、私が勤めた店は都心の大手町から地下鉄で4駅目で、爆破事件の現場から9分という近さだ。東京の地理を知っていたら私だって二の足を踏んだわよ。

 連続企業爆破事件は、私が靴屋の店先に立って「いらっしゃいませー」と言いつつ、人の足元ばかり見ていた頃を前後して次々と起こった。三井物産、間組など12件が攻撃された。

 その一味に属していたのが桐島聡容疑者(当時20才)だ。私たちは50年近く、交番横に貼られた真面目で快活そうなカレを見続けたことになる。長年指名手配のポスターを見ながら、「意外と捕まらないんだね」「ものすごい整形をしていたりして」「東南アジアのどこかの国で現地の女性と結婚しているのかもよ」などと話題にしてきた。

 しかし、まさか「内田洋」という偽名で神奈川・藤沢市内に何十年も住んでいたとは! 工務店に住み込みで働きながら「うっちー」と呼ばれ、好人物と思われていたというから驚くではないの。だけど、納得いかないんだなぁ。工務店に採用されたときの身分はどうしたのよ? メガネを変えたくらいでバレなかったのかしら。それとも一味が手引きしていたのか。

 そういえばいまは、雇用主が従業員に住まいを提供する「住み込み」という雇用形態をほとんど聞かなくなったけれど、50年前は当たり前だったのよね。大会社には寮があったし、私が勤めた靴屋でも、社長一家と同じ屋根の下に従業員が住んで、職住一緒の生活を送った。私はそこで、社長夫人を「奥様」と呼び、その娘を「○○お嬢様」と呼んだ。もっとも、同性から「お嬢様」と呼ばれることに気が引けたらしく、娘は私に「○○さんと呼んで」と言った。それでも住み込みの肩身の狭さといったらない。「退職=住まいをなくすこと」だから、小生意気な盛りの18才の私でさえ、言いたいことの半分も言えなかった。

 だから思うんだよね。桐島は、身分を隠しながらの住み込み従業員で、どれほど肩身が狭かったか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン