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【恥を知れ、恥を!】安芸高田市長、議会での古参議員との激しい対立を公開して話題 結果的に財政を潤わせる見事な手腕

石丸伸二市長

石丸伸二市長(安芸高田市のHPより)

 市議会での激しいやり取りをYouTubeで公開し話題となっているのが、広島県安芸高田市の石丸伸二市長。その様子をディープにウォッチしている『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が面白さを分析する。

 * * *
「恥を知れ、恥を!」

──って、寝起きにいきなり怒鳴られた。え? え? 恥って何?と、寝ぼけた頭をブルブルと振った私。いや、ひとり暮らしの私を怒鳴る人はいないから、すぐに正気に戻ったわよ。

 私の朝は、スマホでユーチューブを見ることから始まる。その日もそうしたら、いかにも切れ味鋭そうな若い男性が議会の壇上で啖呵を切っているではないの。啖呵を受けているのは16名(当時)の中高年議員。2022年6月、広島県安芸高田市の市議会での一幕だ。

 そして大ゼリフの後にちょっと沈黙があって、「という声が上がってもおかしくないと思います」と、彼はストンと声を落としたの。

 この間合い! 彼こそ、安芸高田市の石丸伸二市長(41才)。気がつけばこの日から、私は明けても暮れても同市議会のユーチューブを見てる。「政界のスターは誰?」と問われたら、迷いなく「石丸伸二」の名前を挙げるね。なにせ、「恥を知れ、恥を!」を映した回の再生数は1275万回。人口3万人足らずの市議会の動画がここまでバズったのは奇跡としか言いようがない。

 最初に彼の名前を知ったのは2020年の市長選挙。京都大学経済学部卒、三菱UFJ銀行勤務のエリートが、その職を投げ打って37才で立候補した!と、ちょっとしたニュースになった(ちなみに彼は独身で、趣味はトライアスロン)。

 だけどこういう“跳ねっ返り”が出てきても、いつの間にか話題は廃れ、「あの人はいま」になる。早晩、彼も過去の人になるんだろうなと私はハナから決めつけていたの。

 というのも、彼が立候補したその頃、私は衆議院議員会館でお茶くみのアルバイトを始めたばかりでね、当たり前だけど、衆参両議員723名のほとんどが全国的には無名なのよ。私がフルネームで名前を言えたのは、前総理とスキャンダルがらみの議員だけ。そんなだから、地方の一市長がいつまでもクローズアップされるわけないと思ってた。

 ところが、1年たったら──「あの人はいま」どころか「あの人のいま」というくらいの勢いで、世間の注目を集めている。石丸市長だけじゃない。市長とやり合っている古参議員たちまでが全国区になっちゃったではないの。

 たとえば最近、ネット界隈で「るる山本」と命名されたのが山本数博議員(74才)でね、質問のときにこまごまと詳しく説明する(縷縷)という意味で「るる」という言葉を連発するの。彼がおとぼけキャラなら、すぐにキレるのが山本優議員。彼は「議会中の議員の居眠りをどう思うか?」と聞きにきたメディアに「そんなもの、誰だってするでしょ!」と声を荒らげて、火に油を注いだファイターだ。唯一の女性議員・山根温子議員(68才)も存在感あるよ。「市長大っ嫌い」の炎が全身から立ち上っているよう。彼らは「清志会」という圧倒的多数の会派で、「小生意気な」市長と真っ向勝負しているんだから、面白くないわけがないって。

 で、なんでそこまでもめるのか。

 石丸市長は「市長と議員はそもそも対立するもので、市政は議論を尽くしてよりよくなるもの」と言うの。試しに、地方で市議会議員をしている私の友人に聞いてみたら、「まぁ、理想はね」と気のない返事。そんな議会が日本中にいくつあるのか、というわけ。が、石丸市長は初志貫徹。「ぬるいことをしているから地方の地盤沈下は止められないんだ」とばかりに、X(旧Twitter)ほかSNSでバトルの火種を日々、ばらまいている。

 その結果、安芸高田市のユーチューブ公式チャンネルの登録者数は22万8000人。実はこれ、毎月けっこうな額となって市の収益に加算されているというから驚きだよね。加えて、全国の石丸市長ファンが「応援します」とふるさと納税をするから、これまた市の財政を潤している。そして、石丸市長は照れることなく、「こうなることを見越して人目につく言葉を発していた」と自ら言っている。その手際のよさ、鮮やかさは見事としか言いようがない。だから、「田舎のおじちゃん、おばちゃん議員の敵じゃないっしょ」と私は大拍手していた。

 でも、どうしたことかいま、心情的には、理屈と正論で容赦なく攻め立てられてシドロモドロになっている山根議員に寄り添いたくなるのよ。言い負かされてキレる山本優議員にも「若造になんか負けるな」と心の中で応援していたりして。

 それでも正直よくわかっていなかった議会用語の「二元代表制」「不信任決議案」「専決処分」がどういうことか、頭に染み込んできたんだから、石丸劇場、大したもんよね。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2024年2月29日・3月7日号

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