市販薬による依存症患者が急増

市販薬による依存症患者が急増

 漢方薬は一般的に副作用が少ないといわれているが、なかには気をつけなければいけないものもある。発汗を促して風邪を治す葛根湯や、咳止めの麦門冬湯などに含まれている麻黄という生薬もそのひとつだ。

「麻黄はかつて劇薬とされていたほど体に対する作用が強い。その成分はぜんそくなどに用いられるエフェドリンで、興奮、排尿障害、頻脈などの副作用があります。体にやさしいからと長くのみ続けていると重篤な症状をもたらしかねません」

 サプリメントやハーブも同様だ。特に女性の場合、中高年になると骨粗しょう症予防が大切だが、骨の健康維持のためのサプリメントものみすぎれば害になる。

「カルシウムの吸収を助けるビタミンDを摂りすぎると、血中のカルシウム濃度が過剰に高くなる高カルシウム血症という病気になる。食欲不振や倦怠感などの症状のほか、がんにもかかりやすくなるので死に至る可能性もあります。また、セントジョーンズワートというハーブにはほかの薬の効果を邪魔してしまう薬理効果があるので、気をつけた方がいい」

 薬と名がついていなくとも、薬効があるものには必ず副作用があることを肝に銘じたい。

「別の薬」と思っても成分は同じ

 同じ市販薬を長期間にわたって、あるいは多量にのみ続けるだけでなく、いくつもの市販薬をのみ合わせることで「濫用」を犯してしまうこともある。

「普段から睡眠薬を服用している人が、この時期に花粉症で抗アレルギー薬を同時にのむと、類似した成分が体に倍入ることになり、“朝起きられない”“だるい”“ふらつく”などといった副作用がひどくなる可能性があります。高齢者は、ふらつきによって転倒し、骨折。そのまま寝たきりになって認知症を発症することも多い」

 風邪薬と解熱鎮痛剤の併用も同様だ。風邪薬にも解熱成分が入っているため、両方を同時にのむと定量の2倍を体に入れることになる。特に中高年以降は、その弊害が起こりやすくなると長澤さんは指摘する。

「40代、50代、60代と、加齢とともに体の水分量が減っていくため、同じ量の薬をのんでも、薬の濃度が濃くなってしまう。高齢になるにつれて、副作用が出やすくなると考えた方がいい」

 高齢になって持病を抱え、処方薬を服用しながら、さらに風邪をひいたら風邪薬、腰が痛いからと鎮痛剤、ハウスダストで抗アレルギー薬など、用途が違うからと市販薬を何種類ものむことは、濫用そのもの。三上さんが言う。

「風邪薬や解熱鎮痛剤などの市販薬は一般的に3〜4日のんで治らなければ病院を受診した方がいい。もちろん痛みの予防として連用するのは禁物です。そもそも、月に10日以上も頭痛で市販薬をのむような人は、頭痛外来や専門のクリニックを受診しましょう。14日を超えて解熱鎮痛剤をのむと、薬で余計に敏感になり、薬剤性の頭痛が出る可能性が高くなります」

「市販薬があるから」といって、病院に行かないのはまさに本末転倒だ。

「胃痛を治そうと市販薬をのみ続けたために、病院を受診するのが遅れ、胃がんを見逃してしまったケースもあります」(長澤さん)

“用法・用量を守って”とは市販薬のCMで必ずあるお決まりの文言だが、当たり前になりすぎて、果たしてどれだけの人が真剣に受け止めているだろう。便利で心強いその薬の代償はあまりにも大きい。

※女性セブン2024年2月29日・3月7日号

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