国内

頻繁に煽り運転被害を訴える「煽られドライバー」 “超安全運転”が原因となっているケースも

高機能モデルが人気のドライブレコーダー売り場。2022年調査でドライブレコーダー普及率は5割を超えた(イメージ、時事通信フォト)

高機能モデルが人気のドライブレコーダー売り場。2022年調査でドライブレコーダー普及率は5割を超えた(イメージ、時事通信フォト)

 煽り運転と聞くと、煽るドライバーが100パーセント悪いというのが世間一般のイメージではないだろうか。確かに道路交通法のうえでは、煽ったドライバーが悪いのだろう。だが現実には、そうとも言い切れない実態が存在している。ライターの宮添優氏が、煽り運転被害によく遭うと訴える「煽られドライバー」を身内に抱える人々の悩みについてレポートする。

 * * *
「最初は、世の中にはとんでもないドライバーいるもんだと憤慨し、家族など身近な存在が危険な目に遭わなければよいけど、と思っていました。まさか、あんなことだったとは思ってもいませんでした」

 埼玉県在住の会社員・西島仁さん(仮名・30代)は一昨年、義母(60代)がたびたび「煽り運転」の被害を受けていると訴えているのを聞き、不安を覚えた。何しろ、テレビニュースやワイドショーでは、毎日のように「煽り運転」の様子を捉えたドライブレコーダー(ドラレコ)の映像が報じられていたし、ついに身近なところにも被害者が出たのかと落胆したのだ。

「実はそれまで、車にドラレコを装着していなかったんです。妻と相談し、また被害に遭った時に証拠にもなるということで、義母の車の前後を記録するタイプのドラレコを慌ててつけました。これで、ある程度かは安心かなと思っていたのですが」(西島さん)

 それから数日が経ったある日、西島さんの妻の元に電話をかけてきたのは、なんと警察官だった。神妙な調子で「お母様の件で……」などと警察官が話し始めたから、母から”被害の声”を聞いていた西島さんの妻は咄嗟に「煽られたんですか?ぶつけられたんですか?」と若干取り乱したという。しかし、警察官の説明は、夫妻の想像とは全く異なるものだった。

「義母が煽り運転をした挙句に事故が起きた、と警察官が話していて耳を疑いました。義母はついこの間、煽り運転の被害を受けていると悩んでいたくらいですから、何かの間違いではないか、ドラレコ映像は見たのかと、こちらも少々熱くなってしまいました」(西島さん)

 幸い、義母に怪我はなかったものの、ぶつけられたらしい車は大破。西島さんは妻と2人、警察署に義母を迎えに行ったが、そこで警察官に見せられたのは、西島さんが取り付けた、義母の車のドラレコ映像だ。そこには驚くべきものが映っていたという。

「義母が運転する車が片側一車線の道路を走っていたようですが、後続車からなぜかクラクションを鳴らされているんです。よく映像を見ると、その道路の制限速度は40キロでしたが、義母の車は25キロ程度しか出ていない。さらに右折時も、対向車がずいぶん遠くにいて十分安全が確保されている距離なのに、出発しようとせず、やはり後続車にクラクションを鳴らされていた。義母に何故かと問いただしても、危ないから、用心しているから、というばかり。義母がこんな運転をしていると初めて知って驚きましたが、警察からも”用心はいいが周囲のことも考えて”と苦言を呈されました」(西島さん)

 その後の検証などで、事故が義母の過失によるものではないことは証明された。義母のゆっくりすぎる運転にイライラした後続車が、無理やりに義母の車を追い抜こうとして起きた事故であることが判明。確かに、道路交通法のうえでの過失は義母にはない。だが、警察もはっきり言うことはなかったが、煽られる原因は義母の運転にある、と指摘されたも同然だったと振り返る西島さん。

「義母の安全のために」と取り付けたドラレコだったが、皮肉にも、煽られやすい義母の運転実態が詳らかになり、みずからの運転態度が理由で”煽り運転の被害”に遭う原因が判明した格好だ。

前方に集中しすぎる運転

「妻の運転は危険というわけではありません。でも、明らかに人をイラつかせているし、妻はそれに気がついていない。正直、トラブルを起こされる前に運転をやめて欲しいと思うほどです」

 千葉県在住の自営業・松井純一さん(仮名・40代)も、たびたび妻に「煽り運転を受ける」と相談されることがあったが、一昨年、前後だけでなく左右も撮影できるタイプのドラレコを車に装着したことで、妻が煽られやすい”原因”が判明したという。

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン