《プリンセスなのに格安航空で移動して僻地の空港で外交パスポート出して怪しまれたり、かと思えばエリザベス女王にお茶に招待されたりしてて、プリンセスの日常が面白すぎる》──。そんなひとつのなにげない投稿がきっかけだった。
ドイツ在住の日本人女性・かよさんが、X(旧Twitter)に三笠宮家の長女・彬子さまの著書『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP)の感想を書き込んだのは、昨年5月のこと。『赤と青のガウン』は、女性皇族として初めて博士号を取得し、最近は京都を拠点に日本文化の伝承活動に力を入れられる彬子さまの、6年間の英国留学時の奮闘ぶりをまとめたものだ。
投稿は瞬く間に拡散され、なんと1000万を超す人の目に触れ、大バズり。しかしこの本は2015年1月発売のもので、書店の店頭にはほとんど在庫が残っていなかった。
「ここ数年、SNSをきっかけに昔の書籍が再注目されることが増えています。ただ、なかには絶版しているものもあり、電子書籍でしか手に入らないということも少なくありません。この本も書店在庫がほぼゼロだったので、SNSをきっかけに『ぜひ紙で読みたいが書店にない』『図書館で予約しても数か月待ち』という悲痛の声が、彬子さまのもとへも届いたようです。
そこで彬子さまが出版社に重版を直談判されたところ、紙の在庫の都合で、出版当時の体裁では難しいと。しかし、文庫にならできるということで話が進められたようです」(出版社関係者)
単行本の発売から9年。新たに彬子さま書き下ろしの「文庫版へのあとがき」が加えられ、今年4月3日に文庫版が発売されたのだ。
「早速、全国の書店で『話題の書』となっていますよ。皇族の方の文章ということで堅苦しい文体かと思いきや、気取らないリズミカルな文章で、さまざまな経験や驚きが率直に語られている。博士号を取られるまでの試練が綴られた章も刺激的ですが、特筆すべきは、女性皇族が留学先の寮で生まれて初めてのひとり暮らしに奮闘されるエピソード。
たとえば、それまで赤坂御所に住んでおられた彬子さまは家の鍵を持たれたことがなく、“鍵をかける”という習慣がなかった。ある夜、寮の自室でおやすみになられていると、突然ドアが開いて見知らぬ男性が誤って入ってきた。彬子さまはそのとき初めて家の鍵はかけなければいけないと感じられたそうです」(前出・出版社関係者)
皇族ならではのご経験も。「カジュアルな服装で格安航空を使われたとしても、皇族のパスポートは『外交旅券』と呼ばれる特殊なもの。めったに見ないパスポートを目の前にした空港係員の反応が興味深いです。また、エリザベス女王にお茶に招かれたときのエピソードも披露されています。皇族といえども服装や話題に悩まれたそうで、親近感が湧きました」(前出・出版社関係者)