スポーツ

蛯名正義・調教師が落馬事故について考察 ジョッキーは危険な職業「仲間の事故なんて二度と見たくない」

関係者が集うG1のパドック。笑顔でジョッキーと最後の確認(6月2日、安田記念)

関係者が集うG1のパドック。笑顔でジョッキーと最後の確認(6月2日、安田記念)

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、落馬事故についてお届けする。

 * * *
 今年の春競馬では何件か落馬事故があって、藤岡康太騎手が亡くなりました。本当にあってはならないことで、残念でなりません。現役時代の1992年、玉ノ井健志騎手が落馬して亡くなったレースには僕も騎乗していましたし、翌年亡くなった岡潤一郎騎手は競馬学校で1年下でした。仲間の事故なんて二度と見たくない。このような事故が減ることを願うばかりです。

 時速70キロ以上の馬に跨って10数頭が競うわけですから、危険が伴うのは当然です。落馬したことがないジョッキーはいないだろうし、けがをしたことがないジョッキーもいないでしょう。

 僕は現役時代、前の馬に近づきすぎたり、ちょっと空いた隙間に突っ込んでいったりというような危険な騎乗について、後輩ジョッキーから嫌がられるほど注意をしてきました。こういった無理な騎乗による事故は意識してなくさなければなりませんが、馬は予兆なく突然故障してガクッとくることもあります。調教師としては、馬に少しでも不安があれば出走を見送ります。それが馬のためでもあるし、ジョッキーの命にもかかわることなので、責任は大きい。

 僕は頭を打って意識を失ったことこそありませんでしたが、手足はもちろん、鎖骨は左右とも折っているし、知らないうちに肋骨が折れていたなんていうこともありました。7頭が落馬して巻き込まれた時は、宙を飛んで地面に叩きつけられて腕を骨折しました。

 周りの馬を見てなんとなく嫌な予感がして逃げたこともあります。自覚はしていませんが、危険を察知して回避しているようだと言われたことがあります。内を追走していたけれど、「なにか居心地がよくないなあ」と思って外に出したら、内で先行していた馬にアクシデントがあって……ということは何度かありました。

 回避できたのは技術的なことではなく、運でしかない。自分がなぜそう動いたのかなんてわかりません。ただの勘でしかないし、なんとなく、だったり、たまたまだったり。他の馬を見ていて危ない騎乗だと思うことはあっても、事故を予測することはできないものです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
ラブホテルから出てくる小川晶・市長(左)とX氏
【前橋市・小川晶市長に問われる“市長の資質”】「高級外車のドアを既婚部下に開けさせ、後部座席に乗り込みラブホへ」証拠動画で浮かび上がった“釈明会見の矛盾”
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
新聞・テレビにとってなぜ「高市政権ができない」ほうが有り難いのか(時事通信フォト)
《自民党総裁選の予測も大外れ》解散風を煽り「自民苦戦」を書き立てる新聞・テレビから透けて見える“高市政権では政権中枢に食い込めない”メディアの事情
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
NEWSポストセブン