国内
ススキノ頭部切断事件・公判シリーズ

【ススキノ事件】田村瑠奈被告が10年抱えた闇「ゾンビ妄想」と精神科医の父・修被告はどう向き合ったのか

田村瑠奈被告と父・修被告

田村瑠奈被告と精神科医の父・修被告

 札幌市の繁華街ススキノのホテルで頭部のない男性(当時62)の遺体が発見されてから1年──。逮捕された親子3人のうち、死体遺棄ほう助と死体損壊ほう助の罪に問われている母親の無職・田村浩子被告(61)の第2回公判が、7月1日に札幌地裁(渡辺史朗裁判長)で開かれた。

 6月に行われた初公判では、殺人や死体損壊などの罪に問われている娘の無職・田村瑠奈被告(30)を中心としたいびつな家族関係が明らかになっていた。中学時代から不登校となり、仕事もせず実家で暮らし続ける娘が一家の最優先事項だったようだ。

「弁護側の冒頭陳述では、瑠奈被告は複数の人格が入り込んでいるという“ゾンビ妄想”を抱えていると主張されました。5~6人の魂を持っており、『シンシア』や『ルルー』などと名乗っていたといいます。

 また、瑠奈被告は、“ジェフ・ザ・キラー”という妄想上の恋人と会話し、『ジェフと結婚披露宴をする』と言い出したときは、両親が披露宴に参加したそうです。下手に否定すると、娘が手のつけられない状態になるからです」(全国紙の社会部記者)

 第2回公判では、殺人ほう助罪などで起訴されている父親の精神科医・田村修被告(60)も弁護側の証人として出廷した。緑色の長袖に黒いズボンという地味な服装の修被告は、逮捕前の写真よりも痩せた様子だったが、法廷で取り乱すようなことはなく、弁護士に顔を向けて、淡々と質問に答えていた。

瑠奈被告の「ゾンビ妄想」を解説する父

「ゾンビ妄想」は、10年ほど前から始まったという。証人尋問で修被告は以下のようなことを話した。

「『瑠奈』と娘に呼びかけると、『その子は死んだ』とか『その名で言わないで』とか返されました。落ち込んでいるときにそう言うのかなと初めは思っていましたが、落ち着いて話しているときも、『瑠奈』と呼ぶと、『呼ばないで』と色をなすので……。

『瑠奈という魂はいなくて、私はシンシア。シンシアのほかに複数の人格がいる』と何度か説明を受けたが、覚えきれませんでした。娘は、『シンシアという魂が死んだ肉体を借りている』という言い方をしていて、それがずっと続いています。18〜19歳くらいからです。私どもが通常の親として振る舞うのは難しくなった」
「ゾンビ妄想」という娘の“精神世界”を守るために、家族は言いなりにならざるをえなかった。

「少なくとも『ゾンビ妄想』が出る前は、それなりにしつけをしていました。その頃から自傷やオーバードーズを始めて、本人の精神状態が追いつめられると興奮してとんでもないことになるから言えなかった」(同前)

 時には娘の要望を断ることもあったという。

「けっこう断っています。ただ娘が興奮すると、興奮を静めるために言うことを聞いていました。娘は興奮すると、『生きていくのも辛い。自分の首を絞めて殺してくれ』と言って、私は、『それはできない』と答えました。

 してはいけないことは、『できません』と断りました。犯罪に関わることもできませんと言いました。本人がこちらの意向を聞いてくれることもあって、『屋上で花火をやりたい』と言い出したときは、『屋上で花火をしたら消防がくるから難しい』と伝えたら聞き入れてくれました」(同前)

 昨年1月に修被告が精神科の受診を提案するも、瑠奈被告が拒否するやり取りを記録したとされる録音データについても触れられた。

「いろいろ興奮しているときがあって、ちょうど私のポケットにスマホがあってそれで録音しました。興奮するのは数カ月に一度。興奮したとき、普段とどうも違うなというときに録音していました」(同前)

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン