ドイツのメルケル前首相
女性がトップの国は成功している
イギリスのサッチャー氏、ドイツのメルケル氏、韓国のハン・ミョンスク氏、イタリアのメローニ氏など、海外に目を向ければすでに国のトップを女性が務めることは珍しくない。2017年に女性初の国対委員長を務め、立憲民主党副代表などを歴任した辻元清美参議院議員が指摘する。
「世界を見ると、国のトップが女性というのは当たり前の状態になっていて、16年もの長い期間で政権を担ったドイツのメルケル前首相は象徴的な存在でした。同様に北欧では女性の政治家の比率が高く、アジアでも台湾の蔡英文前総統をはじめ女性のトップがいます。日本にはまだ、その“当たり前”がない。女性リーダーが率いる国は経済も安定して成長しているところが多いし、危機にあっても適切な対応が取れていると感じています」
その具体例として、辻元議員は新型コロナ対策を一例に挙げる。
「新型コロナ感染拡大にあたって、ニュージーランド、台湾、ドイツといった女性リーダーのいる国では比較的感染拡大を抑え込むことに成功しました。素早い判断、明確なメッセージ、国民とのコミュニケーションや寄り添う姿勢が所以だと海外からも評価された。
経済に関しては、特に北欧で顕著ですが、手厚い社会保障制度を維持しつつ、経済成長を達成しています。ノルウェー、アイスランド、デンマーク、オランダ、スウェーデン、フィンランドは1人当たりGDPの上位国(15位以内ぐらい)で、日本(34位ぐらい)とは大きく違います。いずれも女性首相が誕生、定着した国で、女性の持つ“共感力”と“人の話や思いを踏まえて物事を動かそうとする参画”の意識が成功に導いている。日本での女性総理の誕生は、時期を待つのではなく、いまこそ求められているのです」
実際、自民党内からも女性の起用、リーダーの選出という動きがないわけではない。
「近年、経済界などを見ても女性管理職は増え、女性ならではの特徴を見せながら成功を収めている。世界的な政界への女性進出という流れも否定的ではない。同様の流れを進めるという考え方は定着しています。
男だけだと、政策づくりなどに発想の限界がある。そこに女性の視点を入れて政策を構築しなければならないこと、女性議員の比率を増やした方がよりよい政策をつくれることは、党内の意見も一致しているところです」(田村さん)
ただし、日本は女性の社会進出すらまだ発展途上にあり、懸念すべき点もある。
「残念ながら、女性リーダーを育成する仕組み、取り組みがまだまだ充分とは言えません。経済界で女性の総合職を増やしたり、地方議会で女性議員が増えているのは事実ですが、“女性に経験を積ませよう”という仕組みがない。単に、女性を起用してさえおけばいいと安易な形で据えるケースも見られます。
わかりやすい例として、岸田内閣が5人の女性を閣僚にしたことがありました。これは過去最多で話題になりましたが、一方で政務官、副大臣の人事では全員が男性でした。つまり、女性の議員に政務官や副大臣の経験を積ませるということはやらせませんでした」(長野さん)
伊藤議員も指摘する。