10月2日より発売されている『感じのいい人の6つの習慣』

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正月は歳神様、盆はご先祖様のため

 さて、「盆と正月」という言葉があるように、日本人にとってお正月とお盆はとても大きな意味がある。この昔ながらの日本の行事にも「敬う」という精神が込められている。

「今では海外旅行などのレジャーのための長期休暇と考える人も多いのですが、このふたつは神様と仏様(ご先祖様)を家に迎えるというたいへん重要な宗教行事なのです。

 まずお正月は、歳神様が一年の初めに来られるのをお迎えする行事です。そのために家中を清め、家族全員が揃って晴れ着を身につけてご挨拶し、一年の平穏を祈り、家族全員の無事を感謝します。

 一方お盆は、ふだんはあの世におられるご先祖様が、この期間だけお帰りになる行事。家族みんなでお迎えし、一緒に過ごし、またお送りするものです。つまり、お正月とお盆は家にいるということが本来の約束ごとです」

お墓参りは先祖供養と心の清浄

「お墓に参る行為は、先祖供養の基本です。毎月の月命日や春秋のお彼岸にお参りするという家も多いことでしょう。きれいに掃除をして花、水、線香を供え、生前の好物なども置いて手を合わせることは、先祖のためというよりもむしろ今生きている私たちの心の清浄や平安につながるのではないかと思うのです。

 ところが、いつも不思議に思うのは、お盆にだけお墓参りをするという習慣です。地方や宗派によってもさまざまな考え方があるようですが、先に述べたようにお盆はご先祖様が家に帰って来られる時。その時期にお墓に行っても留守にされているはずです。留守の間にお墓を掃除するのはいいのですが、お盆にだけお墓参りをして手を合わせるというのは、少し疑問に感じます」

 神仏や他者を敬う心、すなわち「敬意」を持って行事を大切にし、日々過ごすことにもう一度立ち返ってみるのはいかがだろうか。

(第5回に続く)

【プロフィール】
千 宗屋(せん・そうおく)/茶人。千利休に始まる三千家のひとつ、武者小路千家家元後嗣。1975 年、京都市生まれ。2003 年、武者小路千家15 代次期家元として後嗣号「宗屋」を襲名し、同年大徳寺にて得度。2008 年、文化庁文化交流使として一年間ニューヨークに滞在。2013 年、京都府文化賞奨励賞受賞、2014 年から京都国際観光大使。2015 年、京都市芸術新人賞受賞。日本文化への深い知識と類い希な感性が国内外で評価される、茶の湯界の若手リーダー。今秋、「人づきあい」と「ふるまい方」を説いた書籍『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』を上梓。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。一児の父。Instagram @sooku_sen

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