1992年4月1日、暴力団対策部が発足。その年の3月から暴力団対策法が施行されていた(時事通信フォト)

1992年4月1日、警察庁に暴力団対策部が発足。その年の3月から暴力団対策法が施行されていた(時事通信フォト)

組を辞めるのも容易になった

 ネットで”暴力団構成員数”と調べると、千葉県警の資料が真っ先に上がってきた。警察庁の「組織犯罪対悪に関する統計」からの引用だが、見やすくまとめられている。それによると現在の暴力団構成員および準構成員等の数は、2023年度末で約2万400人。2022年度末は約2万2400人と報じられていたから、1年で単純に2000人が減少した。全国の指定暴力団は25団体、そのうち主要団体が約1万4500人と7割を占めている。構成員数に関する統計として残っている1958年以降、最も多かったのは1963年で、構成員数は18万4091人。平成期で最も多かった1991年の約9万1000人からでも8割近い減少で、統計史上最少人数になったという。それだけ減少していれば、人出不足に喘ぐ組が出てくるのも当然の成り行きである。

 分裂抗争が起きた山口組など、特定抗争指定暴力団に指定された組では事務所の使用が禁止され、大阪市や神戸市、名古屋市などの警戒区域では組員が5人以上集まれば即逮捕。指定暴力団でも本部事務所が使用制限を受けている組もある。そこにコロナ禍が重なり、緊急事態宣言でどこの組も事務所を閉鎖。稼ぎがなくても今まで事務所に行けば飯を食えていた者、事務所の電話番で食いつないでいた者、雑用をこなして親分や兄貴分らに小遣いをもらっていたような者が食えなくなった。

 組員同士が顔を合わせることもなくなり、食べられなくなった組員は飛んだ。昔なら組から勝手に飛んで逃げれば、探し出され連れ戻され、組によっては制裁を受けたというが、「コロナ禍以降、子分の誰かが飛んでもみんな”そうか”で終わり。よほどのことがなければ、逃げたヤツをわざわざ探すようなことも今はない」と話すA氏は、「飛ばなくても、若い者が組を辞めるのも容易になった」という。警察による暴力団撲滅の動きの中、ますます厳しくなる規制を受けて若い子分たちは辞めていき、「組はますます高齢化。親分たちも顔を合わせれば、話題は病気と健康のことばかり」と苦笑いを見せた。

「映画館でヤクザ映画を見た後、誰もが帰り道には肩で風を切って歩いたような時代は遠い昔。今やヤクザは憧れの対象でも何でもない。ヤクザになっても得なことは一つもないから、若い者はこっちにはこない」(A氏)。多くの組で組員が減り続けているのが現状だという。

「山口組もそんなところばかりですよ」とA氏はタバコに火を点けた。

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