月の南極に着陸したのはチャンドラヤーン3が世界初(写真=ISRO/AP/AFLO)
日本とインドの共同探査計画
そして、世界の月探査において忘れてはならないのがインドの存在だ。
昨年、インドは月探査機「チャンドラヤーン3」で月面着陸を成功させた。インド人宇宙飛行士が自国のロケットで有人宇宙飛行を行なう計画も進められている。
「インドは2047年に有人月面基地を建設する計画を発表しています。アメリカと中国に次ぐ第三の台風の目として月面開発競争の一翼を担っていく可能性があります」
日本とインドは2025年に共同で月極域探査機「LUPEX」を打ち上げる計画を立ててもいる。国際的な競争と協力の中で、月面探査の熱は高まりを増している。
ispaceが来年1月に打ち上げ予定の月探査船「レジリエンス」(c)ispace
「日本における宇宙開発の一つの特徴は、民間企業が月探査に熱心であることです」と寺薗氏は言う。その筆頭格が、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」を行なう「ispace」だ。
2023年、民間初の月面着陸を目指して月着陸船を打ち上げたが、着陸高度の誤測定により失敗。最速で来年1月に月探査船「レジリエンス」を打ち上げ、小型月面探査車「テネアシス」を再び月に送り込む予定となっている。同社広報担当者が語る。
「我々のビジョンは『人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ』というもの。今回のミッション2は、そのために最も身近な宇宙である月と地球との間に『シスルナ(Cislunar)経済圏』を構築していくうえでの初期的な取り組みです。月面ではレゴリス(月の砂)を採取し、その所有権をNASAに譲渡する世界初の月資源商取引プログラムの実施も予定されています」
ispaceは東京・日本橋に管制室を構える(撮影/黒石あみ)
東京の中央区に本社・開発所を構える宇宙ベンチャー「ダイモン」は、開発した月面探査車「YAOKI」を年度内に打ち上げる予定だ。同社の中島紳一郎CEO兼CTOが話す。
「YAOKIを地球からリモート操縦して月の南極付近を走らせ、画像データの習得を行なう予定です。数年後には100機を月に送り、月面を走行するYAOKIとアバターを通じて意識をつなげることで、地球にいながら月面旅行を楽しめる時代を創りたいと考えています」