退社後にはグラビア撮影にも挑戦

退社後にはグラビア撮影にも挑戦(撮影/松田忠雄)

 魅力的だと思うことに愚直に向かっていく姿は輝いていて憧れる。それに、これまでの天文学の当たり前を否定する勇気と、自分の命をなげうってでも捧げたいことがあるのが羨ましい。また、教会という大きな権力が思い通りに従ってくれない人を異端として押さえ込む構造が、現代とリンクしているように見えて、主人公たちが正しさを証明し、世の当たり前を変えていく過程を応援したくなるのかもしれない。

 もう一つ、私がこの物語に惹かれる理由は、宇宙の果てしなく続く未知に魅了されるから。

 どれだけ技術が進化して、ものすごく見える望遠鏡ができたり宇宙へ行けるようになったりしても、見えれば見えるほどわからないことが増えていく。どれだけ進んでも手に届きそうで届かない。この永遠に続く未知が気になって気になって、好奇心を止められなくなる。恋愛でも「ベラベラ喋る人よりミステリアスな方がモテる」とか、「届きそうで届かない感じがいい」と言うこともあるが、最近、私は恋も宇宙と一緒だな〜と思ったりしている。

 これが、私が『チ。』を好きな理由だと思う。そしてつくづく私は知的好奇心が罪ではない時代と国に生まれてよかったと思う。

「妹に毎年、クリスマスに謝罪」

 子どもの頃、サンタクロースは誰なのかを突き止めたくて、毎年あらゆる実験をした。

サンタは何語を用いるのか気になってさまざまな言語で手紙を書いたり、サンタのくる日は寝る前に家中戸締まりして出入り口を完全に塞いだり、極限まで寝なかったり、サンタがきた翌朝、足跡を科捜研のように調べたり。

 そして小学5年生の冬、例年通り「サンタは誰なのか研究」の一環で、3つ下の妹も無理やり巻き込み、サンタの痕跡を見つけるために家中を捜索していた。するとクローゼットの奥から、クリスマス用の包み紙が出てきた。そこにプレゼントはなかったが、これはとある仮説を立証できるかもしれない! と意気揚々に両親に研究結果を報告した。すると翌年から我が家にサンタはこなくなった。妹も小学2年生という若さでサンタ卒業となった。

 大人になった今なら思う。サンタが誰かなんて考えるだけで異端だ! 世が世なら、私はとっくに火あぶりにされていただろう、と。もし自分の子どもが毎年ありとあらゆる手でサンタの正体を暴こうとしていたら、頭抱えるな〜。正体なんて知らない方が毎年プレゼントをもらえて幸せでいられたのに。

「いい子にしてたらサンタは来る」なんて、子どもを従順にさせるための文句だと思っていたけれど、それはそれでよかったのかもしれない。未知のままのほうが夢がある。ちなみに私に巻き込まれてプレゼントをもらえなくなった妹には、毎年クリスマスに謝罪している。

 さあ、今年も12月が近づいてきた。都内では星よりもイルミネーションが輝いているが、私は冬の大三角形を探してみようと思う。

【プロフィール】

渡邊渚(わたなべ・なぎさ)/1997年生まれ、新潟県出身。2020年に慶大卒業後、フジテレビ入社。『めざましテレビ』『もしもツアーズ』など人気番組を担当するも、2023年に体調不良で休業。2024年8月末で同局を退社した。今後はフリーで活動していく。渡邊渚アナの新連載エッセイ「ひたむきに咲く」は「NEWSポストセブン」より隔週で配信していきます。

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