ライフ

【新刊】プロレタリア作家と呼ばれた佐多稲子が歩んだ昭和文壇史『美しい人 佐多稲子の昭和』など4冊

林芙美子、壺井栄、田村俊子らとの交流、中野重治との友情など昭和文壇史を歩く

林芙美子、壺井栄、田村俊子らとの交流、中野重治との友情など昭和文壇史を歩く

 もはやお正月ムードも消え去る1月半ば。読書でもして頭の中をリフレッシュしてみては? おすすめの新刊を紹介します。

『美しい人 佐多稲子の昭和』佐久間文子/芸術新聞社/3300円
 30代以降の女性は美人ではなく美しい人と呼ぶべきだと言った作家がいる。中身が“顔”だからだろう。長崎生まれ、小学校中退で東京の工場やカフェ、書店で働いた佐多稲子(1904~1998年)。プロレタリア作家と呼ばれ、戦後名だたる文学賞を次々と受賞した。最初の結婚での心中未遂事件や、再婚した夫の浮気などを派手なドラマにせず、淡々と描く筆が敬愛に満ちて清々しい。

5作連続で本屋大賞の候補に。2025年こそ!? 4月の発表が楽しみ

『人魚が逃げた』(青山美智子・著)

『人魚が逃げた』青山美智子/PHP研究所/1760円
 銀座の歩行者天国。愛する年上女性に贈ろうとティファニーに入る青年、N.Yで舞台メイクの仕事を得て、明日嬉々として旅立つ娘と過ごす母親、熟年離婚した初老の男性、文学賞の発表を喫茶店で待つ作家や銀座のママ。和光、カフェーパウリスタなど銀座の顔となる場所で5人の男女の人生が交差。人魚を探すファニーな王子様の存在が銀座にかけられたお茶目な魔法のよう。

本当の力とは日常の経験から身につく。多少の無理で筋肉も増強(本文より要約)

本当の力とは日常の経験から身につく。多少の無理で筋肉も増強(本文より要約)

『人生の壁』養老孟司/新潮新書/968円
 87歳の養老先生が子供や青年の壁、政治の壁などについて語る。5歳上の湘南の石原慎太郎がデビューしたとき鎌倉の養老青年は“海で青春を謳歌、一体どこの話だ!?”と思ったとか。お金目的の仕事はしたくなくて解剖学へ、壮年期は頑張って空気に抵抗したが、今は「世間の空気を利用するほうが現実的」とも。“ま、プンプンせずゆったり生きましょうや”と言われた気がする。

日本美を巡る旅は文章修業の旅でも。闊達で温かなお人柄のシャワーを浴びる

日本美を巡る旅は文章修業の旅でも。闊達で温かなお人柄のシャワーを浴びる

『日本美のこころ』彬子女王/小学館文庫/1210円
 オックスフォード大学にて海外流出の日本美術に関する研究で女性皇族初の博士号を取得。帰国後も日本美と日本文化に携わる彬子女王。本書の扉写真に驚く。飛行機の模型に見えてボンボニエール(ボンボン入れ)だったとは。前半はそんな工芸品を扱い、後半は正絹の白生地を染めようとした時の“テンヤワンヤ”など、職人さんの工房を訪ねてのルポ。初春気分が一層華やぐ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2025年1月16・23日

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン