東京拘置所内の刑場(法務省/AP/AFLO)

東京拘置所内の刑場(法務省/AP/AFLO)

 直接面会も含め、複数人の死刑囚をさまざまな形で支援している「罪人の友」イエス・キリスト教会、進藤龍也牧師は今回の高裁の差し戻しについて「人情味のある判断でとても評価できる」と話す。

「最後の瞬間には人間としての尊厳を」

「私自身は死刑制度自体に反対ですが、それは措いて考えても、告知当日の執行には人間の最後のあり方として疑問を持ち続けています。やったことはやったことなので、罪を償わなければならない。そして日本には死刑制度がある。それは仕方ないと言われたらそれまでですが、死刑囚に対して、最後の瞬間には人間としての尊厳をもてるよう接するべきだと考えています」

 こう考えるように至ったのは、進藤氏が実際に確定死刑囚と接してきた実体験に基づく。

「政治的な理由だったり再審請求の関係もあって、死刑が確定してから15年以上も経っている死刑囚もざらにいますよね。このような長期間、死刑囚はいつ、自分が執行されるのかという思いで毎日朝を迎えていて、精神的にかなり負担がかかっている。10年以上、睡眠薬など薬に頼っている死刑囚も多くいるのが実情です。精神疾患を多くの死刑囚が抱えています。典型的な薬の影響で顔は腫れぼったくなり、収監前の面影はなくなります。

 例えば東京拘置所は、死刑囚は2つのフロアに分かれて収容されているようです。他の人が執行されたことは直接死刑囚には明かされませんが、点検の時間でもない早朝にたくさんの革靴の足音が聞こえて、『ああ、誰かが執行されたな』と分かるんです。外部との接触は限られていますが、遅れてでも他の死刑囚の執行の事実をいずれ知ります。そしてそのたびに自分の“その瞬間”への恐怖が増す。彼らはそういった環境で生きているんです」

 死刑囚の多くは、関連する書籍などを読んで死刑制度自体に詳しくなるという。

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