ライフ

宮島未奈さん、謎の部活に集まる高校生たちの青春小説『それいけ!平安部』インタビュー「私は生きづらさの問題が出てこない小説を書こうと決めている」

『それいけ!平安部』/小学館/1760円

『それいけ!平安部』/小学館/1760円

【著者インタビュー】宮島未奈さん/『それいけ!平安部』/小学館/1760円

【本の内容】
 菅原高校の入学式当日、牧原栞は同じクラスになった平尾安以加から突然、「平安時代に興味ない?」と声をかけられる。「はぁ?」と思わず口に出た栞に安以加は《「あないみじ……これ、運命の出会いだよ」》。戸惑う栞に《「あたし、平安時代が大好きなの!」》《「だから、この高校に平安部を作りたくて」》。新しい部を作るのに必要な人数は5人。残る3人をかき集め、ついに平安部がスタート。果たしてどんな部活動が始まるのか──。

今度は高校の限られた世界を顕微鏡で観察するみたいに

『成瀬は天下を取りにいく』で本屋大賞を受賞、続篇『成瀬は信じた道をいく』もヒットし快進撃を続ける宮島未奈さんの最新作は、「平安部」という謎の部活に集まる5人の高校生を描く青春小説だ。

「小学館の『STORY BOX』で連載してくださいって依頼をいただいて、打ち合わせでポロっと出てきたのが『平安部』でした。何をする部活なのか決まってなかったし、なぜその発想が出てきたのかも、いまとなっては覚えていないんですが。2023年の初めにそのアイディアが生まれて、2024年の大河ドラマ(『光る君へ』)が平安時代だっていうのもその後に気づいたぐらいで」

 マンガ『すごいよ‼マサルさん!』に出てくる「セクシーコマンドー部」という謎の部活がヒントになったそう。

「ああいうハチャメチャな、他にない部活がいいなあって。名前は決めたものの、みんなで何をするかは、私も平安部員と一緒に考えていきました」

 高校の入学式の日、牧原栞は、腰まで髪を伸ばした平尾安以加という同級生から「平安時代に興味ない?」と声をかけられる。中学時代に「平安顔」とからかわれた経験のある赤染衛門似の栞はその場で断るが、安以加の熱心さにほだされ、平安部設立へと動き出す……。

 同級生に紹介された元サッカー部の大日向くん、百人一首部で幽霊部員化している2年の明石さん、同じく2年で安以加の幼なじみの幸太郎。男女5人が集まり、意外にも部はすんなり発足する。

『成瀬』の作者から、がっつり高校ものを書きたかった、と聞くのは少し意外でもあった。

「たしかに『成瀬』も一応、青春小説のくくりに入るんですけど、学校の話じゃないじゃないですか。学校の外の、地域の話だけど、今度は高校の限られた世界を顕微鏡で観察するみたいにして書いてみたいと思いました」

「平安の心を学ぶ」以外に平安部が実際に何をするかは、書きながら考えた。宇治の平等院や源氏物語ミュージアム、風俗博物館といった小説に出てくる場所にも取材に行ったそうだ。

「実際に足を運んで、平安部の子たちがここに来たらなんていうかな、と想像しました。安以加はどこを見るだろう、幸太郎はどんなボケをするだろう。そういうことを考えるうちに平安部としての5人のキャラクターができてきました。小説に出てくる『菩薩トランプ』は私が平等院で買ったものです」

 ちなみに安以加は、もっとぶっ飛んだキャラクターにするつもりだったそうだ。

「もうちょっと変な子にできたかもしれないけど、結果的にならなかったですね。それよりも、平安部の5人の結束とか、他のことのほうが大事だなって気づいたんです。書いているうちに5人のキャラクターがどんどん育つ感覚があって、一人ひとりのパーソナリティーができていくのが自分でも面白かったですね。5人が5人とも必要で、誰ひとり欠けても成立しない感じは、全篇を通して意識していました」

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン