全国初の「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防止条例が全会一致で可決・成立した東京都議会本会議。2024年10月4日。2025年4月1日から施行された(時事通信フォト)
従業員が受けるカスハラ対策を雇用側に義務を課すなど法制化も国会で進んでいるが、肝心のカスハラ行為そのものは従来の刑法あるいは民法(後述)で対応となる。
「あからさまに大声を上げたり暴れたりなんてのはほとんどありません。よくあるのは舌打ちとか、睨みつけとか、わざとちょっとだけぶつかるとか、そういう小さな嫌がらせですね。ほとんどがその時限りのものです。ストレス発散なのか無自覚なのか知りませんが、ほんと世代関係なく多いですよ」
社員証下げてたって無茶してくる
これまでコンビニスタッフのこうした嘆きを何度聞いたか。あいかわらずのカスハラまみれ、迷惑客と言えば駅かコンビニかというほどの生活インフラならではの多種多彩な客によるパワハラの宝庫と化している。
「とにかくみなさん怒りっぽくなったように思います。それも、ごく普通のスーツ姿のサラリーマンとか、きっちりした身なりの女性とか、泥酔客でもないです」
よく言われる一部のコンビニにたむろする若者やわからずやの高齢者はどうか。
「それは変わらずです。でも個人的には昔のようなヤンキー系のたむろするような若者は都内では減ったと思います。むしろ見かけや世代関係なく理不尽な客がいるというか、いきなり怒ったり無茶な文句を言ってきたりですね、わかりにくい。『え! こんな人が?』といったスーツ姿で妻も子もいそうな人が品出し中に背中にバッグをぶつけてきたりする。舌打ちを残してね」
勤め人ならそれなりに立場もあるし組織に属している分、無茶なことはできないように思える向きもあるかもしれないが、彼は「とんでもない」と話す。
「いやいや、社員証ブラブラ下げてたって無茶してきますよ。オフィス街のコンビニで働く知り合いのスタッフも言ってました。目の前がその客のでっかい会社なのにって」
都心のオフォス街だと、平日のお昼など周辺の同じ大企業の社員が毎日利用してごった返す光景がよく見られる。確かに、筆者も新宿のオフィス街で社員証ブラブラ下げながら弁当のあたため待ちに文句を言っているサラリーマン男性を見た。外国人店員は平謝り、それなりの年齢で会社では役職にあるのかもしれないが、大変威圧的で不遜な言い方だった。部下と思わしき若者も「いつも遅すぎですよね、ここのガイジン」と調子を合わせていた。社員証には知らない人はいないであろう巨大企業のマークがあった。