中国政府による信用格付け及びブラックリスト「社会信用スコア」のひとつ「芝麻信用 (Sesame Credit)」(Imaginechina/時事通信フォト)
仮にカスハラ条例があっても現状は「その程度」(本当はそんな対応ではいけないのだが)と注意が関の山だろう。出入り禁止というのも万引きなど明確な犯罪行為でなければ難しいどころか出禁になっても「しれっと」やって来るそうだ。まして、ただ舌打ちしたり睨んだり、どう見ても問題のないような小さな問題をあげつらって口撃したり、わざとぶつかったりなどは対処のしようがないとも。
それにしても、育児や夫婦関係、あるいは介護か日々の生活上の金銭問題か、ストレスも溜まり本人は辛いのかもしれないがそれを「他人だから」と店員にぶつけるのは筋違いだ。
筆者の恩師である元大学教授にこの話を向けると「彼らにとっては正義」と話す。
「ハラスメントは彼らにとっては正義なんだよ。俺が正しい、俺が正してやる、なんだこの店員はなってないと、彼らにとっての正義を行使するんだ。認知の歪みだけどインターネットなんて基本的にこれで毎日揉めてるよね。リアルでもそういう人はいたけど、やっぱり社会が疲弊すると増えるよね、より一般化するというか、ひと昔前の、こんな立場の人やこんな組織に属する人がそういうことをするわけがない、が通用しなくなっている。ネットは可視化だけどリアルは属人化というか」
属人化ということは個々人の見えない闇がそうした行為に向かうということか。なるほど対処が難しい。
究極的には中国で実験中の人を点数化するカメラを全国くまなく設置して「信用スコア」の採点結果がその人の人生に積み重なるという「社会信用システム」がこうしたモラルの問題を解決すると進められているが、それこそSF小説顔負けのディストピアになりかねない。
「でも中国は実際にそれで表向きは改善したとされてるんだよ。確かに最近中国に行って思ったけど、ひと昔前に比べればとんでもなく親切になったように思う。表向きだろうけどね。他にシンガポールやアラブの富裕国とかの小国もそれに近いよね、微笑みの監視国家とか自由なき幸福とかまあ、オランダでも実験的に貧困地域の若者たちをAIによるアルゴリズムで犯罪可能性ランクみたいな感じで点数化してるそうだけど、犯罪の未然防止とは言っても個人的にはやり過ぎだと思う」
交差点とかカメラに採点機能つけて欲しい
それでも「多少の人の監視と人の点数制はいいんじゃないの?」とは都内40代の元バス運転手、これまたカスハラに遭う代表的な仕事とされ、悲しいかな毎月どころかほぼ連日、カスハラによるトラブルが報じられている。