「「激レアさんは、『今まではどうしてもうまくいかなかったけど、1つ突破口のような何かを見つけて成し遂げた』人が多いんです」
「藤井さんが、ディレクターがピー音をつけたマツコさんと有吉さんのトークから、編集の最後の段階で全部ピー音を外していったんですよ。それで僕の方を見て『俺たちはこういう仕事をやってるんだよ』って。それがめちゃくちゃカッコよかった。その時目尻の笑いジワが目に入ってきて、そんなに笑ってきたんだって。そんな環境に来れたっていうのが、泣きそうなくらい嬉しかったですね」
舟橋は同番組で「新・3大○○調査会」(註1)のコーナーを担当し、ディレクターデビュー。マニアックな気質がいかされ人気コーナーとなった。
(註1)誰もが知る「日本三景」「日本三大祭り」などに対し、一般に知られていないが日本人が知っておくべき3大くくりがあるとして、「西武・西口文也投手の哀しい勝利」「必殺シリーズの奇抜な殺し技」「ジェットマンのトレンディ過ぎる愛憎劇」など、そのジャンルに詳しい有識者がトップ3を決め発表するコーナー。
「藤井さんは会議で一切視聴率グラフを見ずに、面白いか、面白くないかだけの話をしていました。『新・3大○○調査会』もどれだけマニアックでも面白ければいい。ホントにそれだけで判断してくれました。行くところまで行ったなと思ったのが、フットサルFリーグの『バサジィ大分・館山マリオ監督のとっておきの秘策』という企画。『藤井さん、僕の教えに従ってここまで来ました』って思いました(笑)。
それを面白がってくれる有吉さんもマツコさんの知識量と懐の広さも大きかったです。逆に中途半端なものを出すと、現場でシーンとなりますから。『それは引きがないからやめろ』と言われずに育ったことの嬉しさを感じていますし、後々の自分の方向性が決まりました。それで困ることもありますけどね(笑)」
「バズってもTVerが回らない」
昨今は、テレビ局の名物ディレクター・プロデューサーが独立し、配信プラットフォームなどに活動の場を移すことが増えている。そんな中でテレビ朝日は、比較的“流出”を防いでいると言える。内部から見てその理由は何なのだろうか。
「直接的な答えではないかもしれないんですけど、たとえば『アメトーーク』や『ロンドンハーツ』の加地(倫三)さんは、ずっと面白い番組を長く続ける工夫をしているのはもちろんですけど、営業部にもすごく顔を出して、『こんなアイデアが営業にはあるんだけど』みたいに吸い上げて、コンテンツをつくったり、局全体がよくなるようにっていう動きをされていると聞きます。やっぱり上のレジェンドディレクターがそういうことをやってくれているので会社に愛着があったり、行き詰まりを自分の動き次第で解決できるのではと一旦考えるのかもしれません。あと、『バラバラ大作戦』のような、アイデアひとつで番組ができる枠があるのもディレクターとしては魅力だと思いますね」
そんな「バラバラ大作戦」のような深夜番組は、配信の再生数が重要な評価基準になっているという。
「配信って意外と再生数が伸びないんですよね。深夜バラエティ『ガリベンチャーV』の中で僕がやっている『秋山と映画』では、SNSにあげられたスクショがバズって『6万いいね!』がついても、再生数はほとんど変わらなかった。番組公式アカウントで同じスクショをアピールしてもバズらなかったり、バズってもそこから配信に誘導する方法がなかったりと難しいです。いまは『本来言っちゃいけないギリギリのこととか本音をぶっちゃける』みたいな刺激的な内容の番組だと配信が回りやすいんですけど、僕はそれがあまり得意ではないので苦しんでいます」