昨年はリーグ優勝を達成した阿部慎之助・監督
3年契約の2年目でも…
一方で、ミスターが亡くなり、松井氏が“約束”の存在を口にした意味は大きいし、阿部体制が長く続く保証があるわけでもない。
「過去には、不振に陥った原監督が“読売グループ内の人事異動”の名目で辞任し、後任となった堀内氏も3年契約の2年目で辞任した例がある。巨人は“解任”という言葉を使いませんが、事実上は解任のようなもの。成績が悪ければ監督が代わるのは巨人の伝統です。
加えて長嶋さんの“弔い合戦”となる今季は、リーグ連覇と日本一奪回が必達目標になる。現在は3~4位をうろつく状態ですが、Bクラス転落、それも5位や最下位になれば、阿部監督が任期を1年残して辞任という展開も考えられます」(前出・スポーツ紙デスク)
渡邉氏の死去によって新たなトップとなった山口オーナーの存在もある。
「山口さんはミスターと昵懇の間柄でした。今年1月の新年互礼会で松井の将来的な巨人監督就任について報道陣から問われた山口さんは、『そういうふうになるといいですよね』と笑顔で語っており、時期はともかく、ミスターの悲願だった松井監督の実現をオーナーとして後押しする姿勢が感じられる発言でした」(巨人担当記者)
周知の通り、松井氏に監督経験はない。ヤンキースでは打撃コーチのサポート程度にとどまり、選手起用や作戦面などでは経験不足の面がある。
「松井自身も周囲に『巨人の二軍選手のことをあまり知らない』と漏らしていると聞きます。とはいえ、後輩である阿部監督の下でコーチを務めることは考えにくい。今季、阪神監督となった藤川球児氏はコーチをやらず『球団本部付スペシャルアシスタント』としてフロントで編成を担当してから監督に就任した。松井も早いうちにフロントで何かしらの役割を担う可能性が考えられる」(前出・在京球団の編成担当者)
松井監督が実現した際、サポート役を期待されるのが、告別式で松井氏とともに弔辞を読んだ中畑氏だという。
「松井が巨人に入団した時の打撃コーチが中畑さんで、新人時代は連日のように中畑家を訪れて地下室で特訓していた。2012年に中畑さんがDeNAの監督に就任した際には、お祝いの会に長嶋さんと松井がサプライズゲストで登場して3ショットを披露した。松井は『長嶋監督とは師弟関係で中畑さんとは友達です』と冗談交じりに語るほど。松井が監督に意欲を示すなら経験豊富な中畑ヘッドといった体制になるのは自然ではないか」(前出・スポーツ紙デスク)
そうした“松井政権構想”にV9戦士も期待を寄せる。前出・城之内氏が言う。
「巨人の伝統を知る松井にはぜひ監督になってもらい、長嶋さんから伝授された野球を若い選手に伝えてほしい。日本に定住して、長嶋イズムを伝承してもらいたい」
ミスターとの“約束”が果たされる日は予想外に早く訪れるのか。
※週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号