1983年、当時の中曽根康弘首相の指示で「留学生受入れ10万人計画」は始まった(時事通信フォト)
右だろうが左だろうが権力に長くあればそれは左右でなく上下の上になる。ドイツもイギリスも新興右派政党が台頭どころか政権に近づきつつある。イタリアはすでに右派政権が誕生した。かつての反マルクス主義だ、コミンテルン打倒だの保守でない、自国民の生活を第一に考えるというシンプルな保守のスローガンがヨーロッパを席巻している。これまでの金権腐敗の既存政党や移民優遇で自国民に我慢を強いた結果とされる。
この新興保守勢力の台頭は、貧乏な国がフリーライドしているとされるEUで「お前は金があるだろう」と負担ばかりの先進諸国民のシンプルな回答であった。「かわいそうな貧しい国から来た移民を排斥するな」「豊かな国の側こそ他宗教に寛容であれ」「人類みな兄弟」というインテリ層の意見はことごとく聞く耳を持たれなかった。フランスは極右政党の失態もありなんとか踏みとどまったが、アメリカはもちろんヨーロッパ諸国すらこの流れを止めるのは難しいだろう。
日本でも是非はともあれこの流れが加速している。だから現役世代を中心に「自民党なんか保守じゃない」になってしまった。1980年代の中曽根康弘内閣の外国人留学生10万人計画から2023年の岸田文雄内閣の外国人留学生40万人計画とそれを主導してきたのは保守本流を標榜してきた自民党である。
そうした新興保守勢力を支持する人々の「なぜ、まず私たち日本国民のことを考えてくれないのか」はそれこそシンプルな願いだろう。「そんなに移民が可哀想なら都心の一等地にあるバカでかい社屋に住んでもらえ」と大手新聞社が言われてしまう、彼らリベラルメディアの人気のなさも自民党に負けていない。上下の問題で言えば自民党もリベラルメディアも収入面では「上」なのだから。重ねるがいまや左右の問題ではなく上下の問題である。
いつしか自民党は国民を本当に下(げ)に見て、若手すら世襲議員が家系図で家柄を誇ったり、青年局がSM緊縛パーティーを開いたりと変な人たちばかりになった。裏金は「自民党だから」国税すら動かない、ところどころ脱税どころかほぼ脱税でも動かない。自民党だから。そう思われている。