大型広告トラックが走り抜ける新宿・歌舞伎町(イメージ、EPA=時事)
現在、歌舞伎町を中心とした一帯には、たくさんの女性向け風俗店(女風)がある。新宿に拠点を構え、これまでに3000件以上の風俗トラブルを担当してきた「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏は、女風をめぐるトラブルを解決した経験がある。その実態を、歌舞伎町のお膝元にある紀伊國屋書店新宿本店の「新書部門(6月4週)」でランキング第1位を獲得した若林氏の著書『歌舞伎町弁護士』より、一部抜粋、再構成して紹介する。
ホストとして成功できなかった依頼人の丸山さん(仮名)は、百人町の雑居ビルで、「女性向け風俗店の店長」を紹介された──。【全4回の第2回。第1回を読む】
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「社員とか部下になるわけじゃなくて、誰にも指図されない業務委託だから、今すぐ契約できるし、今すぐに稼げるって」
丸山さんが興味を示すと、店長は「業務委託契約書」を出し、サインするよう言った。彼は文言に目を通したのだろうか。
「一応、読むには読みましたけど、ホストクラブも業務委託だったので、そんな深くは考えなかったです。会社員とかアルバイトと違って、時間給みたいな、とりあえず居るだけでお金が発生するわけじゃないってことですよね。お客さんが来て、実際にサービスをすれば、金が入るっていう」
だが、今すぐ金が入るどころか、先に支払うハメになったのは丸山さんだった。彼は、女性向け風俗店のセラピストになるための講習料として5万円を支払い、言われるままに各種のSNSやLINEの新規アカウントを作成した。