私はすぐに「合意書」を作り、店に郵送した。
最近、元SMAPの中居正広氏がフジテレビのアナウンサーだった女性と「性的トラブル」をめぐって「示談した」と報じられているが、こうした場合の「示談書」と「合意書」は同じ性質の文書である。
「示談書/合意書」はあくまでも「民法上の和解」に過ぎない。そして、民法上の和解とは、多くの場合「示談金/解決金の支払い」と「口外禁止条項+違約金条項」のセットで構成される。これは、中居氏と元アナウンサーの「示談書」でも、丸山さんと店の「合意書」でもおよそ変わらないだろう。
「口外禁止条項」とは「合意の存在および内容を第三者に口外しない」というもので、それを破った場合のペナルティとして「受け取った示談金/解決金と同額を支払う」といった内容の「違約金条項」が設定されることもある。
相手が受け取った「示談金/解決金」の金額が大きければ大きいほど、その言動を縛る違約金条項の重みは増すが、中居氏のような国民的な人気を誇ったタレントがトラブルを起こしたケースでは、実は「口外禁止条項+違約金条項」は強力な抑止効果を発揮し得ない。
なぜなら仮に、相手側が「口外禁止条項」を破って示談した内容をメディアにリークしたとしても、即座に違約金が支払われるわけではないからだ。相手方に支払いをさせるためには、新たに民事訴訟を提起しなければならないが、人気商売であるタレントとしては、民事訴訟の提起は却ってマイナスになってしまう可能性がある。
ちなみに、「示談金/解決金」は損害賠償なので税金はかからない。丸山さんには、きっちり105万円が戻ってきた。
(了。第1回から読む)