「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
新宿に拠点を構え、これまでに3000件以上の風俗トラブルを解決してきた「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏のもとには、ドラマさながらの案件が寄せられる。歌舞伎町のお膝元にある、紀伊國屋書店新宿本店の「新書部門(6月4週)」でランキング第1位を獲得した若林氏の著書『歌舞伎町弁護士』より、一部抜粋、再構成して紹介する。(記事内はすべて仮名)
5000万円の貯金はおろか、1億5000万円相当の不動産もだまし取られた相談者。非道な詐欺師集団を、「歌舞伎町弁護士」が追い詰めていく──。【全3回の第3回。第1回を読む】
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私が、日々、歌舞伎町を徘徊している週刊誌記者のフクちゃんから小栗さんを紹介された時、すべてが終わっていた。話が持ち込まれた時点でわかっていたのは、1億5000万円の価値を有する土地建物を、わずか6000万円で騙し取られたということだけ。
私がこの話に興味を持った理由に、ビジネスとしての期待があったことは否定できない。話を聞くかぎり明らかに詐欺なので、財産を取り戻せばかなりの成功報酬が見込めるからだ。
だが実際に調査を始めると、不動産はおろか預金まで根こそぎむしられていたことに、純粋な怒りが湧き上がってきた。さすがに、やりすぎだ。キャバクラやホストクラブで多額のお金を貢いだというような話とは異なり、明らかな犯罪じゃないか。
小栗さんはスマホを持っていたので、彼らの夜の世界での通り名や電話番号、メッセージのやり取り、一緒に撮った写真などはすぐに確認できた。当然ながら、殴られた後の写真などは入っていない。