民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
俳優の磯村勇斗(32歳)がドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)に主演する。磯村にとって民放ドラマ初主演だ。これまで順調にキャリアを積み重ね、印象的な役が多かったため、ネット上では「主演初めてなのか」と驚きの声があがった。なぜ今なのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
* * *
14日夜、ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)がスタートします。
同作は「宇宙の一部になりたい」―――。独特の感性を持つがゆえに人生にも仕事にも臆病だった弁護士が、少子化による共学化で揺れる私立高校に“スクールロイヤー”として派遣されることになり、法律や校則では簡単に解決できない若者たちの青春に、不器用ながらも必死に向き合っていく学園ヒューマンドラマ。主演は民放連ドラ初であり、もちろんゴールデン・プライム帯も初めてとなる磯村勇斗さんが務めます。
9年ぶり民放連ドラ出演の稲垣吾郎さん、主演女優として定着した堀田真由さんを従える形で主演を務めることもあって「抜てき」と思われがちですが、業界内では決してそのようなニュアンスはありません。まさに32歳の今、「満を持して」というムードが感じられます。
磯村さんと言えば、昨年末に新語・流行語大賞を受賞した『不適切にもほどがある』(TBS系)で近藤真彦さんに憧れる「ムッチ先輩」を演じて、河合優実さんとともに「もう1人の主人公」と言われてから1年あまり。
同作は来春にスペシャルドラマの放送も予定されていますが、その半年前となるこのタイミングでの初主演にはどんな意味があるのか。業界内で何を期待されている人なのか。知られていそうでまだあまり知られていないその強みを掘り下げていきます。
すでに100作超に出演した助演巧者
磯村さんの演技力が高く評価されているのは間違いありません。俳優としてのキャリアは10年あまりながらすでに出演作は100作超。『第47回日本アカデミー賞』(2024年)の最優秀助演男優賞をはじめ、さまざまな映画賞の助演男優賞を受賞するなど、すでに「アラサーの俳優でこれほど作品と主演を輝かせるバイプレーヤーはいない」という評価を得ています。
静岡県沼津市で育った磯村さんは中学生時代に自主映画を制作して俳優になることを考え、高校生になると地元の劇団に所属して演技の基礎を学び、大学生になって上京しましたが、俳優業専念のために中退。アルバイトをしながら小劇場での出演を重ねるものの、芸能事務所に入れずオーディションも受けられなかったなどの苦労人としても知られています。
飛躍のきっかけとなった朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合)以降の主なドラマ出演をピックアップすると、『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)では裏家業で悪事を働く若者、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)では主人公に立ちふさがる極悪ヤンキー高校生、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)では小悪魔的な同性愛者、『TWO WEEKS』(カンテレ・フジテレビ系)では主人公の命を狙う殺し屋。
『ケイジとケンジ』(テレビ朝日系)では出世第一の保守的な刑事、『恋する母たち』(TBS系)では女性上司に熱烈なアプローチをする若手宣伝マン、『東京の雪男』(NHK Eテレ)では人間女性と雪男の間に生まれた“雪人”、『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)ではヒロインにつきまとう不気味な週刊誌記者などの幅広い役柄を演じ分けてきました。