覚醒剤密輸ビジネスを始める
拘束された4人が最終的に辿り着いたのがビクータン収容所だ。収容によりグループでの特殊詐欺の継続が困難となるが、渡辺は身柄釈放をもくろみ、関係者に働きかけるため、これまで得ていた金を引き落とし始めた。また、収容所では職員にカネを渡せばスマホの使用や、個室での生活が可能となる。その面でもカネが必要になるため、新たな資金獲得方法を考えるようになる。
それを横目に、一足先に収容所入りしていた今村被告はフィリピンの犯罪グループ、JPドラゴンから独自に情報を仕入れ、覚醒剤を日本に輸出する密輸出ビジネスに乗り出していた。2022年6月、渡辺被告は今村被告に働きかけ、協力して密輸ビジネスを始めるも頓挫し、今村被告とは別に、藤田・小島両被告らと組んで独自に密輸出を始めた。藤田被告は覚醒剤の売り先を開拓し、小島被告は輸出にかかる協力者を探すほか、輸出にかかる備品購入を担当していた。このビジネスを継続するためにもさらに金が必要になっていった。
「この4人は仲良し4人組ではない」と小島被告の弁護人が初公判冒頭陳述で述べたとおり、ビクータン収容所においては、今村被告と、ほか3人は別グループだとみられている。4人のうち、広域強盗をいち早く始めたのも今村被告だ。遅くとも2022年3月から、今村被告はビクータン収容所で「ルフィ」を名乗り、日本の実行役らに指示を送り強盗を敢行するようになっていた。そして同年夏、渡辺被告は今村被告から“実行役の確保”などの協力を依頼される。こうして渡辺グループがリクルートした人材を今村被告に紹介するようになった。その人材発掘を渡辺被告から依頼されたのが、小島被告だった。
小島被告はTwitter(現X)で、漫画『新宿スワン』から拝借した「白鳥たつひこ」というアカウント名を用い、実行犯を探し、今村被告に紹介していた。ところが、今村被告と小島被告が「仲違い」してしまう。そこで、二人の間に藤田被告が入り、小島被告が発掘した実行役を、藤田被告を介して今村被告に紹介するというスキームが出来上がった。