JPドラゴンに仕組まれた“茶番”
加えて、渡辺グループが特殊詐欺を続けていた時期、JPドラゴンとは因縁があったとも小島被告は語った。過去、組織の関係拠点で配下の人間全員がフィリピン当局から拘束されたことがあったのだという。
「JPドラゴンの人間が『フィリピン当局との間に入って助ける』と言ってきて、仲裁のために日本円で約5500万円を請求してきたことがありました。渡辺はそれを支払い、その場で組織の人間全員が解放されましたが、JPドラゴン側から『ここで続ければまた摘発されるから一緒にやらないか』と言われ、一緒に働き始めた時期がありました」(被告人質問での小島被告の発言)
だが小島被告によればこれは、そもそもフィリピン当局による拘束から、JPドラゴンに仕組まれた茶番だったのだという。最終的に、渡辺グループの“ビジネス”だけでなく“人材”までも奪われる格好となったため「反目するようになった」(同)。そのためビクータン収容所でJPドラゴンと交流するようになっていた今村被告への複雑な思いがあるようだ。
それでも強盗事件の実行役をリクルートし、藤田被告を介して今村被告に紹介していた小島被告。日本で実行役を動かし、民家に押し入り家人に暴力を振るわせて金を得る……彼らが収容所でこうした強盗を指示していたのは、身柄釈放の資金獲得のためという目的があった。検察官は「前例のない事件だ」として小島被告に懲役23年を求刑した。弁護側は「懲役11年が相応しい」と訴えている。
(了。前編を読む)
◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)