新しい会場のなかを行ったり来たり
新会場のIGアリーナについては、「広すぎて迷子になりますよ」と苦笑いしていた。
「新しく建てられたので溜席の座布団の下に靴と荷物を入れるスペースがあるし、これまでの愛知県体育館と違って空調は完璧。下から見ると満員御礼の垂れ幕が少し揺れているんですよね。それだけ換気がよくなっているので、うちわを使う人が少なくなりましたよね。
ただ、建物のなかに入ると広くて広くて。大勢いる案内係も慣れていないのか、うまく説明ができない。溜会の控室に行くのに1階と2階を行ったり来たりになる。早めに行っているのに、楽しみにしていた大の里の土俵入りに間に合わないかと心配になりましたよ」
そのうえで、「“大村崑のメガネ”をかけていくとアカンね」と続けた。
「みんなカメラ(スマホ)を持っているから溜席に行くまでに“写真撮ってください”と次々に捕まるんですよ。ボクも座る場所を探さないかんのに、焦りました。
皆さん“昔からのファンで、『やりくりアパート』を見てたよ”とか“『赤い霊柩車』、見てますよ”と言ってくださってありがたいんですが、放っておいてという感じでした(笑)。行き先がわからないし、みんなに腕を引っ張られて止められる。これには困ったね。13日目は変装していこうと思っているんです」
オレンジ色のポロシャツを着ていたことについてはこう話す。
「ボクのファンが相撲中継を見てどこに座っているかわかるようにブルーやレッドといった服を着ているんですが、最近は派手な観客が多すぎて少々の色では目立たなくなってしまった。強烈な色でないといけないし、ちょうど参院選の投開票日だったので参政党のカラーを着ていったんです。橙色というのか、あれは目立ったね」
新会場開催と新横綱・大の里の誕生で15日間のチケットが発売即日に完売という相撲人気のなか、「チケット入手も大変だが、歩けなくなったら観戦に行けない。時間がある時はジムに通って鍛えて次の場所に備えています」という大村さん。やはり93歳には見えない本物の好角家だった。