通算勝利数は日本競馬史上10位で現役最多という名伯楽・国枝栄調教師
ただそのうち「シンコウ~」の安田修オーナー、「ホッカイ~」の北海牧場さんや社台グループから声をかけていただけるようになり勝利数も徐々に増えてきた。
1995年、アメリカのキーンランドセールに行ったのだが、目をつけていた馬が骨の問題があるとかで買うことができなかった。ところが、その後食事をしたホテルのトイレで、ノーザンファームの吉田勝己社長と偶然隣り合わせになった。吉田社長は父ヌレイエフ、母シルバーレーンの牡馬を競り落としていたので、なにげなく「調教師は決まっていますか?」と聞いたらまだだというので「やらせてくださいよ」と言ったんだ。私がこんな風に「営業」をするのはめったにないことだったし、トイレでお会いしなければ、わざわざお願いすることはなかったかもしれない。ダメ元みたいな気持ちだったが、思いがけずやらせてもらうことになった。吉田社長によれば「この馬は金子真人さんという新しい馬主さんと半分ずつ持つことになっている」とのこと。
この馬が3年後、私に初のGI勝ちをもたらしてくれたブラックホークなのだが、この時はまだ馬も見ていなかったし、金子さんとも面識がなかった。
【プロフィール】
国枝栄(くにえだ・さかえ)/1955年岐阜県生まれ。東京農工大学農学部獣医学科卒業後の1978年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。1989年に調教師免許を取得して1990年に開業、以後優秀調教師賞7回、優秀厩舎賞7回。主な管理馬はほかにブラックホーク、マツリダゴッホ、サークルオブライフ、ステレンボッシュなど。
※週刊ポスト2025年8月1日号