三田紀房氏のXより
東京大学理科一類は、正式名を「教養学部前期課程理科一類」といい、主に化学や物理学、数学を中心に学ぶコースです。後期課程では工学部、理学部、農学部などに進むバリバリの理系です。水野はこのとき初めて、自分は「理一」を受けるのだと知り、自分を東大に合格させるという桜木は、そのための秘策を持っていると気づくことになるのです。
読者にとってもこれは同じで、このエピソードによって、本作が受験をテーマにした漫画だと明確に知る。学校再建は、あくまで裏のテーマになっていくわけです。
ここから、アンケートの順位が急上昇しはじめました。「東大合格」という目標が掲げられて、これから何が起こっていくのだろうと読者が興味を持ってくれたわけです。
のちに僕は、この成功法則を「バスの行き先理論」と名付けました。
路線バスは必ず行き先が決まっています。行き先が決まっていないバスになんか誰も乗りません。物語も同じだと気づいたのです。
『ドラゴン桜』は当初、話がどこに向かっているのかわからなかったので、読者はついてきてくれませんでした。そこで、改めて話の行き先を提示して、どうやってそこに到達するのかに興味をもってくれる読者を集めることができました。
この「行き先こそが肝要だ」と気づいたから、『ドラゴン桜』は大ヒットしたのだと思います。
(了。第1回を読む)