「安青錦まで待たないといけないのかな」
元日本相撲協会外部委員で好角家として知られている漫画家のやくみつる氏も懸念を口にする。
「豊昇龍は今の相撲では、たぶんもたないなと……。かつて上手を引いてぶん投げるというスタイルだった千代の富士は、前みつを取って寄るというスタイルに修正して大横綱になった。そうした修正ができれば豊昇龍も成績は安定してくが、それをやらない限り無理だなと思う。早々に横綱の引退記録を更新することにもなりかねない」
昇進してわずか3場所で引退勧告まで取り沙汰されている状況だが、昭和以降の横綱で最も短命だったのは戦後初の横綱・前田山(第39代)の6場所。在位8場所は31歳で横綱に昇進した三重ノ海(第57代)、32歳で昇進した初代・琴櫻(第53代)ら3人いる。
ただ、ある若手親方は「相撲協会執行部は簡単には引退勧告を出せないと見られている」と話す。
「遅咲き横綱は負けが込んだり、金星を乱発したりすると引退勧告が出て短命になるのは仕方がない。豊昇龍の場合は事情が違うでしょう。初場所に12勝3敗で豊昇龍が優勝すると、場所中に照ノ富士(現・伊勢ヶ濱親方)が引退したために横綱が空位になるとして、協会が無理やり昇進させた。
豊昇龍の優勝は平幕に3敗しての12勝だったし、連続優勝ではなかったということで審判部でも慎重論があったが、審判部から一任された審判部長の高田川親方(元関脇・安芸乃島)が八角理事長(元横綱・北勝海)に後押しされて推挙した格好です。大の里が昇進したからといって簡単に辞めろとは言えない。しかも10月のロンドン公演を控えるなかで、なおのこと引退勧告を出せない」
複雑な事情がありそうだが、前出・やく氏はこう言う。
「豊昇龍はメンタル面もかなり弱っているので、叔父さん(元横綱・朝青龍)が逃げ込んだモンゴルのホジルト温泉(かつて朝青龍が師匠に無断でモンゴル帰国して療養していた温泉)という効果てきめんの温泉があるらしいので、そこで泥パックでもしてくれば、という感じですね。
大の里との“大豊時代”とか言われていましたが、ちょっとイメージしづらいですね。“大”は異論ないが、“豊”は違うだろうと。じゃあ誰だといえば、琴櫻は言うに及ばす、このままでは安青錦が食い込んできて“大安時代”になる。語呂もいいので、安青錦まで待たないといけないのかなという気がしてまいりました。一方の大の里も勝った一番と負けた一番が極端。大の里への要求は高いので、単に優勝するだけでなく全勝優勝をする横綱になってもらいたいですね」
※週刊ポスト2025年8月8日号